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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第77回   語り上戸(かたりじょうご)
老人は、すっかり上機嫌になっていた。
「人間、ぼやぼやしてると、生活に追われて死んでしまいます。」
「そうですね。」
「人間は死ぬために生きているのです。」
「えっ?」
「生きる物は、皆死ぬために生きているのです。」
「…」
「だから、日々の自分の人生を大切にして生きなければいけません。」
「はい。」
「偉い人間は、時間が余った暇なときに自分を育てるのです。」
「自分を育てる?」
「そうです。怠けていたら、いつの間にか棺桶の中です。生きてる時間は短いのです。」
「そうですね。」
「人生は、自分の心を探す旅です。」
「心を探す旅?」
「はい。自分の心は、誰も教えてはくれません。自分の心は自分で探すのです。」
「なんだか難しそうですね。」
「それは、間単に生きようとしてるからです。楽に生きようとしているからです。」
「…」
「楽あれば苦ありと言います。車ばっかり乗ってると、身体は衰え後で苦しみます。」
「そうですね。」
「自分の心を甘やかしてはいけないのです。」
「はい。」
「人生は悲しいほどに短いのです。」
「はい。」
「生きてる間に、何を成したか、それが問題なのです。」
「はい。」
「自分は何のために生まれて来たのか、早く見つけることです。そしたら幸せになれます。」
「そうですねえ。」
姉さんの携帯電話から、レベッカのフレンズが鳴り出した。姉さんは携帯電話を取った。
「はい、もしもし…」
合言葉は無かった。
『先ほどは、電話をかけてくれてどうもありがとう!』
自然薯(じねんじょ)の龍次だった。さっきと、声が違っていた。
「すみません、間違って電話したんです。ごめんなさい。」
『そうなんですか。じゃあ、また間違って電話してください。たいへん失礼しましましたじゃ〜〜ん。』
電話は、一方的に切れた。
「じゃ〜〜ん、だって。横浜の人かなあ?マンションに住んでる感じだなあ。」
声が違っていたことが気になった。ひょっとしたら、音声変換かしら?と思った。
老人は、ニヤニヤと笑っていた。
「恋人かな?」
「そんなんじゃありませんよ。ただの自然薯(じねんじょ)です。」
「じねんじょ?」
「いや、こっちの話で。」
「自然薯と言えば、高野山の自然薯は、とってもおいしいんですよ。」
「そうなんですか?」
姉さんの目の色が変わった。
「そんなにおいしいんですかあ?」
「驚くような粘りと独特な甘い香りが、高野山の自然薯の特徴です。」
「そうなんですか。」
「高野山のお好み焼きって、ご存知ですか?」
「いいえ、そのようなものは。」
「ご存じない?」
「はい。」
「自然薯が入っているんですよ。」
「そうなんですか。」
「自然薯かあ・・」
駐車場の方から、二人の女性がゆっくりと歩いてやって来るのが見えた。
老人は振り向いた。きょん姉さんも振り向いた。
「おっ、帰ってきた。」
「…」
「妻と娘です。近くの温泉まで行ったんですよ。」
「じゃあ私は、これで失礼します。」
「あっ、そう。また遊びに来てください。遊びじゃなくって、絵のモデルに。」
「はい。」
「いや〜〜、語ってしまったなあ。お宅のロボットが変なことを聞くもんで、つい余計なことを。」
「えっ、何て聞いたんですか?」
「人間は、何のために生きてるんですか?ってね。変なロボットだねえ。」
「ごめんなさい。最近、ちょっと変なんです。」
「面白いロボットですね。新型ですね。」
「じゃあ、失礼します。」


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