20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第72回   奴隷根性
「兄貴〜、俺達このまま、ここで掃除でもやっていようよ。」
「ああ?」
「そのほうが楽じゃん。自分で考える必要もないし。」
「…」
「兄貴みたいに、変なことを考える必要もないし。」
「変なことって、何だよ?」
「夜逃げ救助隊、とかさ。」
「困った人を助ける、クリエイティブな立派な仕事だよ。」
「そうかなあ?」
「あれは、傑作の仕事だよ。」
「あんなの駄目だよ。」
「いつまでも、いい大人が人の世話になって、どうすんだよ。」
「いいじゃん。そのほうが楽だよ。」
「そういうのをな、奴隷根性って言うんだよ。」
「どれいこんじょう?」
「何も考えないで、牛や馬のように働くことだよ。」
「何も考えてないってことはないよ。」
「食うとか、セックスとかはな。そういうのは、本能って言うの。知恵じゃないの。」
「知恵?」
「知恵!猿とかは物を作れないだろう。クルマとかテレビとか。」
「そんなの作れるわけないじゃん。作ったら、大変だよ。大ニュースになっちゃうよ!」
アキラの手を、蟻がはっていた。
「あっ、蟻だ!」
アキラは、強く手を振り、蟻をはらった。
「たとえば、蟻が核ミサイルで人間に復讐とか?」
「おまえ、面白いこと言うね。」
「そぉ〜お?」
「漫画家の才能があるよ。」
「そうかなあ?」
「ああ、とっぴだよ。今のはびっくりしたよ。」
「漫画家ねえ…」
コンコン、ノックがあった。「保土ヶ谷です。」
アキラが返事をした。
「どうぞぉ〜。」
龍次が、のこのこと二人の部屋にやってきた。
「ファンの方は、もう帰られたんですか?」
アキラが答えた。
「兄貴のファンね。ちょっと前に帰っちゃたよ。」
「そうですか。」
「また、将棋やりに来たの?」
「違います。頼みがあって来ました。」
「頼み?」
「アキラさんは、パンクの修理とかできますか?」
「自転車くらいならできるよ。」
「リアカーなんです。」
「やったことないけど、できるんじゃないのかな。」
「そうですか。ちょっと、修理してもらえませんかねえ。」
「道具はあるの?」
「あります。」
「じゃあ、やってあげる。」
「じゃあ、お願いします。」
龍次とアキラは、部屋から出て行こうとした。龍次が立ち止まった。
「ショーケンさん。夕食を作るのが面倒だったら、食堂がありますから、どうぞ。白い建物です。」
「あっ、そぉお。」
「食堂で食券を買ってください。」
「ああ、そうなんだ。」
二人は部屋から出て行った。
ショーケンは煙草を吸っていた。煙草を座卓の上の灰皿に押し付け消火すると、立ち上がった。
「食堂ねえ、奴隷根性で行ってみるか。」
出て行こうとしたが、ふと立ち止まった。
「ちょっと待てよ。」
ショーケンは、急須に残っていた緑茶を灰皿に流し込んだ。
「よし、これで大丈夫。」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 32722