「あなたの、お名前は?」 「葛城今日子(かつらぎきょうこ)と言います。」 「今日を強く生きる、あなたに、ぴったりの名前だ。」 「そうですか?」 「そして、葛城の姓は、葛城王朝から来ている由緒ある立派な姓です。」 「葛城王朝…」 「大和王朝の前にあったとされる王朝です。」 「そういう王朝があったんですか?」 「はい。」 「初耳です。勉強になりました。」 「そうですか。」 「荒野に咲く、一人でも生きて行ける、強い一輪のユリの花みたいな人だなあ。」 「そっうですかねえ。誉めすぎですよ。」 「わたしが見たところ、しなやかで強い意志の持ち主です。」 「そうかな?」 「目を見れば分かります。あなたには、依存心が見えません。」 「依存心…」 「普通、特に女性は他人に頼ろうとします。あなたにはそれがない。」 「そう言われれば、そうですね。」 「何でも、自分で解決する。」 「…そうですね。」 「人真似が嫌いですね。」 「はい。どう頑張っても、自分は自分ですから。」 「すばらしい。一杯飲みませんか?」 「えっ?」 老人は、テーブルの上のバッグからウイスキーの小瓶を取り出した。 「けっこうです!」 「飲んでもいいってことですか?」 「逆、逆!」 「そうですかあ、それは残念だ。」 「わたし、お酒は駄目なんです。体質に合わないみたいで、飲むと青くなるんです。」 「お気の毒に。こんなおいしいものを。」 老人は、小さなグラスに注ぐと、一気に飲み干した。 「う〜〜ん!美人と一緒に飲むと、一段とおいしい!」 「好きなんですねえ。」 「飲みすぎなければ、酒は身体にいいんですよ。百薬の長って言うでしょう。」 「好きな人は、必ずそう言いますね。」 「う〜〜〜ん、あなたの回答は、いつも利口だ。すばらしい!」 「すばらしいのは、この景色です。太陽が神秘的で、なんだか神ががって見えます。」 「太陽は大昔から神です。無信仰のない人でも、太陽に手を合わせる人がいます。」 「そうですね。」 「太陽は、四十六億年前からあるんです。太陽があるから、わたしたちもここにある。」 「そうですね。」 「弘法大師の大日如来みたいに、神として感謝しなくてはなりません。」 「だいにちにょらい?」 「簡単に言うと、太陽神のシンボルです。」 「弘法大師って、真言宗ですよね?」 「そうです。真言密教とも言います。」 「仏教ではないんですか?」 「違います。太陽信仰の弘法大師教です。」 「そうなんですか。」 「高野山の僧は日の出を拝み拍手を打ってから一日の修行にはいるんですよ。」 「そうなんですか。」 「そうだ、ここに来る前にインターネットで、大日如来、不動明王、弘法大師3点セットを注文したんですよ。早く来ないかなあ〜。」 「そんなの売ってるんですか?」 「インターネットは、何でも売ってますよ。」
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