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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第66回   人生を語らず
福之助は、不思議そうに顔を斜めに倒しながら、テレビを見ていた。
「人間って、いろんな人がいるんですねえ。不思議だなあ…」
テレビでは、新日本赤軍メンバーの顔写真を流していた。
「あの人達は、いったい何をしてるんですか?」
その質問に答えたのは、きょん姉さんだった。
「今の政府に不満があるんだろ。そういう人達だよ。」
「破壊活動は無法行為です。処罰されます。あの人達は、法律に違反しています。」
「そんなことは分かっているんだよ。」
「場合によっては、死罪になります。」
「そんなことも、分かってやってるの。」
「…つまり、死ぬ覚悟でやっているってことですか?」
「そういうことだな。」
「姉さんは、奴らに味方しているんですか?」
「味方?」
「そういうふうに聞こえます。」
「敵とか味方とか、そういう小さなことじゃなくって、人間の生き方を言ってるの。」
「奴らは犯罪者です。」
「英雄も犯罪者も、同じなんだよ。」
「はっ?」
「そんなのは、勝った奴らが、後で勝手に決めたことなんだよ。」
「誰がですか?人間がですか?」
「ああ。人間の生き方としては、同感はできないけれど、あっぱれだよ。侍(さむらい)だよ。」
「人間の生き方?あっぱれ?さむらい?」
「人は、ただ生きているんじゃないってことだよ。」
「ただ生きているんじゃない…」
「自らに目的を持って生きているから、人間なんだよ。」
「死ぬ覚悟でですか?」
「そういうこと。」
「自らに目的を持って死んで行くってことですか?」
「そぅいこと。人生は、死ぬも八卦(はっけ)、生きるも八卦(はっけ)ってことだな。」
「死にも八卦(はっけ)、生きるも八卦(はっけ)…、まるで博打(ばくち)ですね。」
「そぅいうことになるかな。」
「姉さんも、死にも八卦(はっけ)、生きるも八卦(はっけ)で生きているんですか?」
「わたしは…、違うよ。わたしの坂道を歩いているんだよ。」
「どのくらいの傾斜の角度の坂道を?」
「うるさいねえ、あんたって。傾斜の角度なんて、どうでもいいだろう!」
「だったら、姉さんの生き方だけでも、よろしかったら教えてください。」
「…野に咲く一輪のユリの花のように生きている!かな…、これでいいか?」
「なるほど!」
「分かったね!」
「お父さんの、教えなんですね。」
「じゃないよ。わたしの、自分の考えだよ。」
「そうなんですか。」
姉さんは歌いだした。

 あの山越えて〜 野を越えてぇ〜 わたしはわたしの道を行くぅ〜 ♪ あらえっさっさぁ〜 ♪

「何ですか、その、あらえっさっさ〜って言うのは?」
「掛け声だよ。」
「は〜〜、大したもんですねえ。」
「何が?」
「掛け声ですよ。」
「今、作ったんだよ。」
「大したもんです。」
「才能だな。」
「人間に限らず、劣勢遺伝子は淘汰(とうた)されます。」
「うん?いきなり難しいこと言うねえ。」
「ダーウィンの進化論です。」
「誰が淘汰するんだい?」
「地球の環境、大自然の環境が、適応できる強い遺伝子を選び淘汰するんです。」
「なぁ〜るほど。」
「逆境を越えて行くのが、生物です。動物です。人間です。」
「そうだぁ〜〜!おまえ、ロボットのくせにいいこと言うねえ。大学出?」
「東大は、門から入って、直ぐに出ました。」
姉さんは、吉田拓郎のナンバーを歌いだした。

 越えて〜行け そこを〜〜 ♪ 今は〜まだ 人生を語らず〜〜 ♪
  朝陽が昇るから起きるんじゃなくって〜 ♪ 目覚めるときだから〜 旅を〜する〜 ♪
 教えられるものに別れを告げて〜 届かないものを〜 身近に感じて〜 ♪
  越えて〜行け そこを〜〜♪ 越えて〜行け それを〜〜♪
 目の前には〜 道は〜無く〜〜 ♪ 道などは 何も無く〜〜ぅ〜 ♪ 

アニーは、姉さんと福之助の会話を、ニヤニヤと笑って聞いていた。


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