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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第6回   家出少女A
「アキラ、電話をするときには、発信元が分からないように、コレクトコールを使えよ。」
「分かった。」
アキラは、カレーパンを食べながら、携帯電話でインターネットのニュースを見ていた。
「兄貴、来月から三百円だってよ。ガソリンの値段。おっそろし〜。」
「そりゃあ、大変だ。」
「貧乏人は乗れないね。」
「これからは、貧乏人は馬車だな。」
「ばしゃ?」
「馬とか、牛とか。」
「でも、そういうのも、のんびりしてていいかもね。」
「そうだな。」
ショーケンは窓際に座り、景色を見ていた。
「みんな、自給自足にすればいいんだよ。」
「じきゅうじそくって、何?」
「自給自足だよ〜。そんなことも知らねえのかよお。」
「学校では、そんなの教わんなかったよ。」
「聞いてなかっただけだろう。」
「そうなのかなあ。」
「自給自足ってのはなあ・・自分で作って、自分で食べんだよ。」
「そうか。じゃあ、俺毎日やってるよ。なあんだ、そんなことか。」
「おまえには、馬車のほうがいいかもな。」
「じゃあ兄貴、馬車買ってタクシーやろうよ。年寄りは喜ぶよ。」
「馬車なんて、どこにも売ってねえよ。」
「兄貴、さっきから何食べてんの?」
「これ?スモークチーズだよ。」
「おいしいの?」
「おいしいよ。」
「やっぱインテリは、しゃれたの食べんだね。」
四十分ほどで、高野山に入った。
「アキラ、ここで降りるぞ。」
「ここでいいの。」
「ああ。」
二人は、金剛峯寺(こんごうぶじ)前というところで降りた。宇宙刑事アニーは降りなかった。
「あの女、終点まで行くのかなあ。」
「そんなこと、知らねえよ。」
アキラは腕時計を見た。
「兄貴、二時四十五分だ。」
「けっこう早かったな。」
「ここまで来れば、大丈夫だね。」
「やつらはここには入れねえからな。」
「ざまあみろってんだ。」
目の前には、黄金に輝く大きな寺が見えていた。
「お寺に行っても、しょうがねえしな。」
「そうだねえ。俺たちには関係ねえ世界だね。」
高野山(こうやさん)は山ではなく、和歌山県北部、周囲を千メートル級の山々に囲まれた標高約八百メートルの台地の名称だった。百以上の寺があり、平安の時代から数万の僧兵によって護られ、聖地になっていてた。
そこは、独立した行政区になっていて、独自の警察機構があり、頭脳警察も入れない場所になっていた。
「兄貴〜、高野山コーラだって!」
コーラの好きなアキラが、自動販売機の前で足を止めた。
「やっぱ、違うねえ。横須賀とは。」
「まったく、景色が違うな。」
「景色じゃなくって、自動販売機。」
「自動販売機は、同なじだろう。」
「横須賀には、高野山コーラなんてないじゃん。」
「どうせ、味は同じだよ。」
「飲んでみなきゃあ、分かんないじゃん。」
後ろから声がした。
「それ、お茶の味のコーラだよ。けっこうおいしかったよ。」
アキラは、びっくりして振り向いた。高校生くらいの少女が、赤い折り畳み自転車に乗って止まっていた。
「あんたたち、横須賀から来たの。」
「ああ、そうだよ。」
「あたし、鎌倉から来たの。」
「鎌倉って、逗子の隣の鎌倉?」
「そうよ。」
少女は一人だった。
「こんなとこで、何やってるのかな?」
「遊びに来たのよ。」
「ひとりで?」
「そう。」
ショーケンが口を挟んだ。
「ひょっとしたら、家出じゃねえのかぁ?」
「そう、家出少女A。あったり〜〜〜!」





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