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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第57回   紅流踊り酔拳
カレーの匂いが、部屋中に満ちていた。寝ていたアニーが、上体を起こした。
「何をつくっているんですか?」
姉さんは、台所に立ちエプロンをしていた。
「野菜のカレースープです。身体が温まるんですよ。」
「いろいろと、すみません。」
「いいんですよ。料理は趣味ですから。」
「ほんとうに、ごめんなさい。」
「気にしないでください。」
福之助は、姉さんの隣にいた。
「姉さんは、料理が上手なんです。」
姉さんは、エプロンを外し、福之助に渡した。
「ちょっと、オレンジソーダとブルーベリーコーラを買ってくるから。」
「はい。」
「あと二十分くらい、弱火で煮込んだら、火を止めてね。」
「はい。」
きょん姉さんは、ドアを開け出て行こうとした。慌てて、福之助が止めた。
「あっ、鍵言葉は?」
「あ、そうか。さっきのでいいよ。」
「アイアンメイデンですね。」
「そう、アイアンメイデン!」
「姉さん、忘れないでよ。」
「ああ。」
「あいつらに見つからないようにね。見つかったら、黙って逃げてよ。」
「ああ、これでも昔は陸上部で、百メートル十一秒だったんだから。」
「その過信が心配なんです。」
「大丈夫だよ。すぐに帰ってくるから。」
姉さんは、出て行った。セグウェイに乗ろうとしたが、腕時計を見て止めた。
「もうすぐ五時だわ。これじゃあ、目立つな。」
セグウェイは、ログハウスの裏に表から見えないように置いてあった。
「歩いていくか。」
姉さんは、病院に向かった。
「病院の前の自販機に、たしかブルーベリーコーラがあったような…」
転軸山公園(てんじくさんこうえん)に向かう路を、ニート革命軍らしき集団がやってくるのが見えた。
「あれ、なんだあいつら、帰りが早いなあ?」
姉さんは、大きな木の背後に隠れた。
ニート革命軍の服装をした六人が、やってきた。
姉さんは、携帯電話を上着のポケットから取り出した。
「ついでだから、一枚撮っていくか。」
彼らは目の前を、何事かを喋りながら通り過ぎて行こうとした。
「よし、今だ。」
姉さんは、シャッターを押した。
シャッター音に、隊員の一人が気付いた。
「誰だ!?」
「木の後ろに、誰かいるぞ!」
姉さんは、逃げようとしたが、あっと言う間に囲まれてしまった。
「おまえ怪しいやつだなあ。何やってるんだ、今カメラで撮っただろう?」
「いいえ。」
「嘘つけ!」
姉さんは、二人の男に両脇をかかえられ、引きずり出された。
「乱暴ねえ、何するんですか!?」
「お前、スパイだろう!?」
「スパイ?何のことかしら?」
後方から、鶴丸隼人がやって来た。
「どうしたんだ?」
「こいつ、スパイです。木の陰に隠れて、写真を撮ってました。」
きょん姉さんは、七人の男達に囲まれていた。観念した姉さんは、まるで酔ったように踊り出した。
みんなは、びっくりした。
「なんだ、こいつ!?」
足取りはフラフラと、腕の動きは円を描くように踊り出した。
「なんだ、なんだ?」「あ〜、見てると、目が廻る…」「地震だぁ〜!」
みんなは、前のめりに倒れこんだ。鶴丸隼人は慌てて目をつぶった。
「みんな、見るな!」
用心深く目を開けると、いなくなっていた。
「あれは、紅流(くれないりゅう)、踊り酔拳(すいけん)!」


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