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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第53回   そっくりウサギ
「じゃあ、待ってます。」
姉さんは、携帯電話を切った。
「やっぱり紋次郎だったよ。家出したんだって。あけみさんも来るって。」
福之助は、喜んでいた。
「ほんとうですか?」
「明日の三時ごろに、来るって言ってたよ。」
「そうですか。あ〜〜あ、どうしましょう!?」
「な〜にが、どうしましょうだよ?」
「すいません、独り言です。」
「変なやつだなあぁ。」
会話を聞いていたアニーが質問した。
「あけみさんって?」
姉さんが答えた。
「福之助のメンテナンスをやってる方なんですけど、メンテナンスしているロボットが家出したんです。」
「家出って、高野山(こうやさん)にですか?」
「はい、紋次郎という、新型のロボットなんですけど。」
「紋次郎…」
「はい。」
「いろいろと大変ですねえ。」
窓の外では、木々の葉や草花が、風にそよいでいた。
「少し風がでてきたみたいだねえ。」
「そうですねえ。」
絵を描いている男の近くを、2匹のウサギが競い合うように飛び跳ねて行った。
「ウサギだわ!」
「今のウサギ、よく似てましたねえ。」
「そうかい?」
「ええ、そっくりでしたよ。色も形も。」
「動物は、同時に沢山産むからね。似てるのもいるだろう。」
「でも、あれは似すぎですよ。」
「そうかなあ。」
「わたしの回路の、パターン認識では、99%同じ物体です。」
「おまえの回路は、旧式だからな。」
「そりゃあ〜無いよ〜、姉さん!」
「じゃあ、クローンかなんかか?」
「そうかも知れませんねえ…、いなくなりましたね。」
「そうだねぇ。どこに行ったんだろう?」
アニーが、呟くように言った。
「この辺りは、ウサギやリスが、なぜか多いんですよ。」
「昔から多いんですか?」
「最近、多くなったらしいです。たぶん、餌をやる人が多くなったからじゃないでしょうか。」
「そうかも知れませんね。」
「熊も、ときどき出ますから。」
「ここにも出るんですか?」
「ええ、出るらしいです。…知らんけどな。」
「ははは、面白いわ。こいうときに使うんですね。」
「そうなんです。」
「今度、誰かに使ってみよう。」
福之助の目玉の動きが止まった。
「姉さん、気温が下がってます。」
「室温は何度だい。」
「現在、14.8度です。」
「下界よりは、10度低いなあ。」
「そうですねえ。千メートルの高台ですからねえ。」
姉さんは、アニーを見て尋ねた。
「寒いですか?」
「ちょっとだけね。」
「じゃあ、エアコンで暖めましょう。福之助、エアコン点けて。」
「はい。」
釣竿を担いた三人の子供達が、川に向かって歩いていた。
「釣りもいいなあ。どこで釣るのかなあ?」
「弘法大師の堤防というところがあるんです。」
「弘法大師の堤防?」
「弘法大師が設計した堤防で、円形に湾曲してるんです。」
「水の圧力を計算してるんですね。」
「そうらしいです。」
「弘法大師は科学者でもあったんですね。」
「はい。」
「あっ、そうだ。抗菌マスク買ってきたんだ。」
姉さんは、紙袋から抗菌マスクを取り出した。アニーに手渡した。
「はい。」
「どうもありがとう。」



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