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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第52回   知らんけどな!
「奥の院の看板があったんですけど、奥の院って近いんですか?」
「ええ、公園の隣にあります。」
「何があるんですか?」
「弘法大師・空海がいます。」
「います?いますって、生きてですか?」
「はい、って言うか、そういうことになってます。」
「生きていることになっているのですか?」
「はい、ミイラになってね。」
「ミイラ!?」
「石室のなかで、座っていられるんだそうです。」
「そうなんですか。それは知りませんでした。」
「そういうことらしいです。大阪人は、こういうとき、知らんけどな!で終わるんですよ。」
「あっ、それ聞きました。さっき、いきなり、知らんけどな!って言って行ってしまったんですよ。何のことだか、さっぱり分かりませんでした。そういうことだったんですね。」
「べつに意味はないんですよ。別れの挨拶なんです。」
「そうだったんだ。」
「そのミイラなんですけど、見た人はいるんですか?対面できる人はいるんですか?」
「ええ、でも限られた人しか対面できませんけど。」
「お坊さんもですか?」
「はい、お坊さんもです。限られた人だけです。」
「じゃあ、ミイラの写真とかは、どこにも無いんですね。」
「ええ、そうです。」
「そうですかあ〜。」
「見たいんですか?」
「…ちょっとだけ。」
「昔は、偉い人は、ミイラになってたんですよ。」
「復活のためにですか?」
「密教の場合には、守護神になるんですね。弘法大師は、今も高野山を守っているんです。」
「偉い人と凡人は、どこが違うんでしょうかねえ?」
「そうですねえ…、偉い人は、物事を大きく見てるんじゃないですか。」
「大きくですか…」
「凡人は、その場の小さな事に惑わされてしまいますね。大きく見れない。」
「そうですねえ。」
「大局観の違いではないでしょうか。」
「たいきょくかん?」
「大きく見て判断する能力です。囲碁や将棋の能力ですね。」
「アニーさんは、囲碁とか出来るんですか?」
「嗜(たしな)む程度です。父が、囲碁で生活してたものですから。」
「囲碁で、プロ棋士だったんですか?」
「はい。小さい頃は、厳しく教わりました。」
「そうか、だから冷静なんですね、いつも。」
「そうでもありませんよ。」
福之助は、窓際に立って、外を眺めていた。
「姉さん、甲賀忍だ。」
姉さんが、「えっ〜!?」と言いながら、駆け寄ってきた。福之助が見てる方向を見た。
「ほんとだねえ。何やってるんだろう?」
「リヤカーに、人を乗せてますよ。」
「見りゃあ分かるよ。」
「後ろで押しているロボット、紋次郎に似てますねえ。」
「そうだねえ。」
「昨日も、紋次郎みたいなのを見たし…」
「本当に、紋次郎かも知れないねえ。」
「だったら、何しに来たんでしょう?」
「さぁ〜〜?」
「紋次郎だとしたら、あけみさんも来てるんでしょうか?」
「そうかも知れないねえ。仕事かなあ・・」
「何の仕事でしょう?」
「…電話してみようか。」
「確認したほうがいいかも知れませんね。」


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