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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第47回   ボケロボット
「ラブリーきょん姉さん。」
「鍵言葉が違います。」
「ん?おかしいなあ・・、ラブリーきょんちゃん。」
「鍵言葉が違います。」
「あっ、そうだった。可愛い今日子ちゃん。」
「鍵言葉が違います。」
「ん、何だったかなあ・・」
戦闘モードの福之助は黙っていた。
「あ〜、すっかり忘れちゃった。わたしだよ、可愛い声で分かるでしょう。」
「分かりますけど、鍵言葉を発声してください。」
「忘れちゃったんだよ〜ぉ。」
「鍵言葉を言わないと、開けることはできません。」
「ったく、融通の利かないボケロボットだなあ。」
「失礼なことを言わないでください。鍵言葉を言わないと、開けることはできません。」
「う〜〜〜ん、困ったなあ…」
携帯電話がかかってきた。アニーからの電話だった。
『鍵言葉は、アイアンメイデンです。』
「あっ、そうだった。アニーさん、どうもありがとう。」
福之助は黙っていた。姉さんは、大きな声で正確に丁寧に言った。
「アイアンメイデン。」
「鍵言葉、解除。」
福之助は、ドアを静かに開けた。
「お帰りなさい。」
「な〜にが、お帰りなさいだよ。まったく、融通が利かないロボットだねえ。」
「命令は絶対ですから。」
「もっと、ロボットはロボットらしく、論理的に行動したらどうなの。」
「命令は絶対ですから。」
「プログラムを変える必要があるな。」
「そうですね。」
アニーは、ベッドで横になっていた。
「アニーさん、どう?」
「さっきまで寒気がしてたけど、今は大丈夫。」
「体温計と有田(ありだ)みかんも買ってきたわ。」
姉さんは、体温計を渡した。
「ありがとう。代金は、後で払います。」
「いいんですよ、いつでも。」
「まったくマヌケだなあ、風邪なんか引いちゃって。」
「仕方ありませんよ。人間だけが生きているわけではありませんから。」
それは、福之助の声だった。
「風邪を引いても後手ひくな。」
変な言葉に、姉さんは首を傾げた。
「なんだい、そりゃあ?」
「将棋の格言です。」
「どういう意味なの?」
「勝負は、先手必勝という意味です。」
「ふ〜〜〜ん。あんた、変なこと知ってんだねえ。」
「どういたしまして。」
「ボケてるけどね。」
「そりゃあ無いよ、姉さん。」
転軸山森林公園には、大人六名が泊まれるログハウスが六棟あった。
大きな窓から見える隣のログハウスの前では、イーゼルを立てて絵を描いている初老の男が、筆を持って佇んでいた。
「姉さん、絵描きさんだあ。」
「あっ、ほんとだ。いいなあ、ここは優雅で。」
その男は、鋭い目で風景を物色していた。
「わたしも、描きたくなりました。」
「あんたは上手いけど、ありゃあ絵じゃないよ。」
「絵じゃない?」
「ただの写真。熱い血の通ってない魂のない模写。」
「でも、熱い電流が流れてますけどなあ〜。」
「けどなあ〜?、なんだい、その言葉使い?」
「失礼しました。エラーです。」
「あの目つきは、ただ者ではないなあ…」
「そうですか?じゃあ、わたしの目つきは?」
「あんたは、ただ者、ただ者ロボット。ただロボット。」
「あの人は、ただ生きてるだけの人じゃあないよ。」
「どういう意味?」
「欲望で生きてるんじゃなくって、信念とか思想とか哲学で生きている人ってことだよ。」
「じゃあ、わたしは、ただ生きてるだけってことですか?」
「あんたは、生きてるんじゃなくって、動いてるだけなの。生きてるんじゃないの。ドゥ〜ユ〜ノゥ?」
「あちゃ〜〜〜!」
「動いてるのと、生きてるのは、じぇんじぇん違うの。」
「あちゃ〜〜〜!」
「人間も、そういう人多いけどね。」
「そうですね。」


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