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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第45回   高野四郎の鐘
龍次は、杉本さんに尋ねた。
「杉本さん、大丈夫ですか?」
杉本さんは、ベンチに腰掛けていた。両手を伸ばし、身体を支えていた。
「ちょっと、腰をやられちゃったみたいなんだ…」
「歩けないの?」
「ああ…」
「これじゃあ、仕事なんか出来ないな。忍くん、リアカーを持ってきてくれ。病院に連れて行こう。」
「はい。じゃあ、持ってきます。」
忍は、駆け足で庭園内に入って行った。
「立てる?」
「・・なんとか。」
「前にもやったことあるの?」
「はじめてだよ。」
「椎間板(ついかんばん)かなあ・・」
忍は、リアカーを片手で引きながら、駆け足で戻ってきた。
「龍次さん、俺行きますよ。」
「一人で大丈夫かな?」
「大丈夫です。」
ロボットの紋次郎が、庭園内から駆け足でやってきた。杉本さんの前で、しゃがみこんだ。
「一宿一飯の恩義、あっしが背負って行きましょう!」
それを見ていたアキラが笑った。
「おまえさあ、時代劇の見過ぎじゃないの?」
みんなも笑った。
忍が笑いながら断った。
「いいよ、俺がリアカーで運ぶよ。杉本さんをリアカーに乗せてくれよ。」
「分かりました。」
紋次郎は、杉本さんを抱きかかええようとした。紋次郎の動力源が、ウィ〜〜ンと唸った。
「重いなあ…」
アキラが紋次郎の側(そば)に、慌てて駆け寄った。
「なんだよ、ロボットのくせに力が無いんだな〜!」
「ごめんなさい。」
杉本さんが、ゆっくりと立ち上がった。
「いいよ、大丈夫。自分で乗れる。」
杉本さんは、ゆっくりとした動作で自分で乗った。
龍次が、紋次郎に言った。
「それじゃあ、紋次郎くんは、リアカーが揺れないように、後ろから押して行きなさい。」
紋次郎は、素直に答えた。
「はい!」
甲賀忍と紋次郎は、高野山病院に向かって、ゆっくりと進み出した。日本三大名鐘のひとつ、根本大塔の前にある大塔の鐘・高野四郎の鐘が、一時の鐘を打っていた。
歩(あゆみ)が、龍次を見て尋ねた。
「ショーケンさんは、どこで仕事してるんですか?」
「午後からは、天徳院庭園(てんとくいんていえん)の中です。」
「集合場所は、いつもの公園ですね。」
「そうです。」
歩(あゆみ)は、ショーケンとアキラに手を振った。
「じゃあ、頑張ってねぇ〜!」
ショーケンとアキラは、少し笑いながら黙って手を振った。
龍次たちは、庭園の中に入って行った。
歩(あゆみ)がいなくなってから、龍次たちのいた場所を、野球帽をかぶりリュックを背負った青年が通り過ぎて行った。



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