高野山郵便局の反対側の信号の前で、セグウェイに乗って渡るのを待っていると、野球帽をかぶりリュックを背負った、さえない表情の青年が通りかかり、姉さんに尋ねてきた。 「あのう…」 次の言葉が無いので、姉さんは促(うなが)した。 「なんでしょうか?」 「あのう…」 「だから、何でしょうか?」 「ニート革命軍の村って、ご存知でしょうか?」 「ああ、知ってますよ。次の交差点を右に曲がると、警察署があります。そこを真っ直ぐ行くと、転軸山公園があります、そこを左に行くと、ニート革命軍の村です。」 「ああ、どうも、ありがとうございます。」 青年は姉さんの目をかわすように深く頭を下げ、足早に去ろうとした。 姉さんは、青年を呼び止めた。 「ちょっと、待った!」 青年は足を止め、振り向いた。 「何でしょうか?」 「暗いなあ!」 「はっ!?」 「顔が暗いなあ。そんな顔をしてたら、貧乏神や死神が寄ってくるよ。」 「えっ!?」 「どんなに悲しく辛くても、笑顔で歩きましょう。そうすると福の神が寄ってきます!」 「そうなんですか?」 「ええ、そうです。そうすると人も寄ってきます。」 「分かりました。」 「笑ってみて。」 青年は、笑ってみせた。 「でっきるじゃない。とってもいい顔だわ。」 「ありがとうございます。」 青年は、深く頭を下げると、立ち去ろうとした。 「ちょっと待って。何しに行くの?」 「…龍次氏の弟子になりたくって、来ました。」 「弟子に…」 「はい。」 「ふ〜〜〜ん、人気あんだね。公園を過ぎたら、川に沿って行くの。」 「分かりました。」 「あっ、そうだ!今、ニート革命軍の連中は、高野山の掃除をしているわ。」 「掃除ですか?」 「きっと、山内のどこかで掃除をしているわ。」 「いろいろと、ありがとうございます。」 青年は、きょん姉さんの目を見ながら頭を下げると、足早に去って行った。 信号が青になっていた。姉さんは、急いで渡った。郵便局があった。 「郵便局は、ここだね…、コンビニ、コンビニ…」 大きな男が通りかかった。姉さんのセグウェイを見て立ち止まった。 「おっ、セグウェイだ!」 大阪訛りだった。姉さんは、渡りに船で尋ねた。 「この辺りに、コンビニありますか?」 「あるよ。こっちに百メートルほど行きなはれ。直ぐに分かりまんがな。」 「ありがとうございます。」 「知らんけどな。」 「はっ!?」 男は去って行った。 「知らんけどな…、どういうこと?」 姉さんは、意味が飲み込めなかったので、とにかく向かった。 薬屋は、コンビニ<ココストアぜにや>の隣にあった。景観重要建造物・明治23年とらや薬局。 「とらや薬局・・、ここだな。」 大きな虎が、店前に前足を上げて立ちすくんでいた。 「知らんけどなって、ちゃんとあるじゃない。」 中に入ると、おばさんの見本のようなおばさんが出てきた。 「いらっしゃいませぇ!」
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