20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第42回   根来衆
ショーケンとアキラは、大門からすぐの所にある、テ−ブル七つの<つくも食堂>で龍次と一緒に、名物の釜めしを食べた後、大門の金剛力士蔵の下で、石の階段に座って一服していた。
ショーケンは、煙草の煙を吐くと、龍次に尋ねた。
「皆さんは、どこで食事を?」
龍次は、食堂で買ったホットな缶コーヒーを飲んでいた。
「適当な場所で、弁当を食べていますよ。」
「俺達、いいんですか、こんなところで?」
「今日は、特別です。」
アキラは、コーラを飲んでいた。
「おまえ、コーラ好きだねえ。」
「これ、胃腸にいいんだよ。」
「ほんとかよ?」
「ああ、そうだよ。アメリカ人は胃腸が悪いときに飲むんだよ。」
「ほんとかよ?」
龍次が、口を挟んだ。
「あっ、それ本当ですよ。アメリカの医者は、胃腸が悪いときには、コーラを飲みなさいって言います。」
アキラの顔は、得意気だった。
「なっ!」
「ふ〜〜ん。おまえ、胃腸悪いの?」
「別に。」
突然、甲高い女の声がした。
「ショーケンさ〜〜ん!」
赤い折り畳み自転車に乗った女子高校生だった。昨日のリスカの少女だった。
龍次が少女に手を振った。
「歩(あゆみ)ちゃん、もう終わったの?」
「今日は、土曜日だから。」
「あっ、そうか。」
ショーケンは目を細めて、少女を睨んでいた。
「歩(あゆみ)ちゃんって言うんだ。無闇な嘘はいけないよ。」
「昨日は、ごめんなさい。ショーケンさんだったから、つい。」
アキラには、学生服姿の少女が眩しく見えた。
「つい、なんなんだよ?」
「つい…、分からないけど、嘘をついてしまったの。」
龍次は、思慮深い僧侶のような優しい目で、少女を見ていた。
「嘘は、女性の最終兵器ですね。」
アキラは、兄貴みたいな微笑みを見せていた。
「最終兵器?」
「おそらく、ショーケンさんに、かまってもらいたかったんですよ。」
アキラは、少女を横目で睨んだ。風が、少女の前髪を揺らした。
「ふ〜〜〜ん。」
「だから、ショーケンさんと友達になれたんですよ。」
「なるほどねえ〜。」
「女性は、結果オーライなんですよ。」
「ふ〜〜〜ん。な〜〜んだか、複雑だなあ。」
少女は、黙っていた。数秒の沈黙が流れた。雑草の間から、コウヤボウキが、小さな白い花をつけて風に揺れていた。アキラが少女に尋ねた。
「ここには、高校もあるんだ?」
「あるよ。」
龍次が、アキラを見ながら説明をはじめた。
「高野山大学系列の、高野山高校というのがあります。高野山真言宗設置の私立の高等学校です。」
「なんでもあるんだね。」
「病院も、スーパーも、コンビニも、インターネット喫茶もありますよ。」
「警察も?」
「ええ、高野山防衛警察という、高野山だけの警察部隊が。」
「えっ!?」
「大丈夫、同胞である我々には手を出しません。逆に守ってくれますから安心してください。」
「へ〜〜〜、そうなの。」
「昔の、この辺りを銃で守っていた、織田信長と戦っていた根来衆(ねごろしゅう)みたいなのものです。」
「根来衆(ねごろしゅう)?」
「真言密教の僧兵部隊です。」
遠くの方から、甲賀忍の声がした。
「龍次さ〜〜ん!」
甲賀忍は、マウンテンバイクに乗っていた。龍次の前で止まった。
「何かあったのかね?」
「杉本さんが、天徳院庭園(てんとくいんていえん)の前で、ぎっくり腰で動けなくなってます。」
「そりゃあ、大変だ!今、行く!」
みんなは、急いで天徳院庭園に向かった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 32722