食事が終わると、忍者は皿洗いをしてから、 「夕食分はログハウスの中です。また明日、2時ごろに来ます。」と言い残し、さっさと帰ろうとしたが、立ち止まった。 「あっ、そうだ。窓の近くに、用心のために、ハイテク案山子の吠太郎(ほえたろう)を立てておきました。」 アニーは、少し高い声で答えた。 「ハイテク案山子(かかし)の吠太郎(ほえたろう)?、何それ?」 「なんだったら見ておいてください。熊避けです、近づくと吠えます。」 「分かったわ、見とく。」 忍者は、手を振って去って行った。 アニーたちは、ログハウスの中に入る前に、裏に廻った。 ウォ〜〜〜〜! 窓のそばに、狼男の案山子(かかし)が、吠えながら目を光らせ大きく手を上げて立っていた。 姉さんは、胸を両手で押さえて驚いた。 「わ〜〜、びっくりした!」 アニーは冷静だった。 「これが、ハイテク案山子(かかし)の吠太郎(ほえたろう)ね。」 福之助は、視線を上下に動かし、静かに観察していた。 「赤外線で感知している、単純な仕組みのやつです。」 アニーが手を上げると、また吠えた。 「これで、熊が逃げて行くのかしら?」 姉さんは、しげしげと眺めた。 「誰が作ったのかしら、センス悪いわねえ〜。」 福之助は、案山子(かかし)の裏を見ていた。 「りゅうじア〜ラびっくりアイデアショップって、書いてあります。」 「名前からして、センス悪いなあ。」 「そうですねえ。」 「姉さん!」 「なによ、いきなり大きな声出して。びっくりするじゃないか。」 「保土ヶ谷龍次って書いてありますよ。」 「えっ?」 姉さんも、案山子(かかし)の裏側を覗き込んだ。 「ほんとだ。」 アニーも覗き込んだ。 「保土ヶ谷龍次!』 福之助は、姉さんを見た。 「龍次は、案山子(かかし)も売ってるんでしょうか?」 「ニート革命軍が、こんなものを?」 「はい。」 「案山子(かかし)を?」 「調べてみましょうか。」 「どうやって?」 「ここに、電話番号が書いてあります。声を聞けば分かりますよ。」 「そうだな、声を聞けば分かるな。これも仕事の内だな。」 アニーが頷(うなず)いた。 姉さんは、上着の内ポケットから、携帯電話を取り出した。電話をかけた。 五回呼び出し音の後に、龍次が出た。 『はい、保土ヶ谷龍次です。』 その声は、ニート革命軍・保土ヶ谷龍次の声ではなかった。 「すみません、間違えました。」 『ひゃひゃひゃあ〜〜!自然薯(じねんじょ)みたいな僕に電話をかけくれて、どうもありがとう。』 「やっぱり違ってたわ。」 アニーが質問した。 「何て言ってました?」 「ひゃひゃひゃあ〜〜!自然薯(じねんじょ)みたいな僕に電話をかけくれて、どうもありがとう。って言ってたわ。」 福之助は、目玉を上に向けていた。 「龍次は、ひゃひゃひゃあ〜〜!なんて言いませんよね。」 「そうだね。聞いたことないね。」 「でも、変なこと言う人だねえ。自然薯(じねんじょ)みたいな僕に、だって。」 姉さんは、ジルバのステップで踊りだした。 「じねんじょ、じねんじょ♪」 コスモスの花が風に揺れ、遠くでは、山羊たちが草を食(は)んでいた。 アニーも、首を傾げながら、ジルバのステップで踊りだした。 「じねんじょ、じねんじょ♪」 福之助も踊りだした。 「じねんじょ、じねんじょ♪」 みんなは、踊りながら歌いながら、ログハウスの中に入って行った。
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