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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第36回   フラフラ♪
茶屋の奥の方から、ちょこちょことリスが出てきた。福之助の足元で止まった。
アニーが見ていた。
「あらぁ、リスだわ。」
姉さんも見た。
「ほんとだ、かっわいい。」
茶屋の奥の方から、五歳にも満たない女の子がやってきた。
「リスちゃん、リスちゃん。」
リスは、福之助の両足の間をくぐって逃げていった。
「リスちゃん、リスちゃん。」と言いながら、女の子は、福之助の目で立ち止まった。
福之助は、黙って座って、景色を眺めながら、右手で紙コップを持ち、お茶を飲む真似をしていた。
女の子は、びっくりした。そして、福之助のアルミの脚を触った。
「わ〜〜、ロボットだ〜!」
福之助は、女の子に挨拶をした。
「こんにちわ。」
女の子は、びっくりした。
「わ〜〜、しゃべった!」
福之助は、リスの逃げて行った方向を指差した。
「リスは、あっちに行きましたよ。」
「わ〜〜、手が動いた!」
アニーが、女の子に声を掛けた。
「ロボットは初めて見るの?」
「うん。」
姉さんが、福之助の肩をポンと叩いた。
「なんかやってあげなよ。」
「えっ、なにをですか?」
「何でもいいよ。」
「何でもと言っても…、それじゃあ落語を。」
「おまえ、アホか。子供がそんなの分かるわけねえだろう。」
アニーは笑っていた。
「動きのあるのが、いいんじゃないかしら。」
「じゃあ、おまえの得意な、ショーケンのフラフラダンスをやってあげなぁよ。」
福之助は、女の子を避けながら、ゆっくりと立ち上がると、茶屋の前に出て歌いながら、ふらふらしたレゲエのステップで踊りだした。

 ハレハレ〜 ♪ ハレハレ〜 ♪
 時の流れに〜 フラフラフララ〜 ♪ どこもかしこも〜 フラフラフララ〜 ♪
 ヤクザも家具屋も 医者もスターも 流し流され フラフラフラフラ〜 ♪
 第三世界が来るぜ〜〜 ♪ 春よ来い〜〜 ♪
 子供達もフラフラ〜 政治家もフラフラ〜 ♪ 右も左もフラフラ〜 ♪
 自由に羽ばたけ〜 鳥の〜〜ように〜 ♪
 第三世界が来るよ〜〜 ♪ 春よ来い〜〜 ♪
 狐も狸もフラフラ みんなフララフラフラ〜 狂って狂ってフラフラ〜 ♪

アニーは、福之助を不思議そうに見ていた。
「ショーケンって、松田優作が<神の領域に最も近い人>と慕っていた、ロックのカリスマね。」
「ああ、そうなんですか。」
「マザー・テレサの慈善活動に共感し、インドのカルカッタでチャリティコンサートを行った、世界的に有名な人よね。」
「ああ、そうなんですか。」
アニーが福之助に声を掛けた。
「よっ、天才カリスマ不良、ショーケン!」
姉さんも、アニーが声を掛けた。
「よっ、天才カリスマ不良ロボット、福之助!」
姉さんが、手拍子を始めた。
「あんた、昨日オイルをしこたま飲んだから、動きがいいじゃない。」
福之助は、踊りながら返事した。
「そうですねえ。」
福之助は、まるで何かにとりつかれたように踊っていた。
女の子は、手を叩きながら、笑って見ていた。
「わ〜〜、おもしろい、おもしろい!」
茶屋の老婆は、目を丸くして驚きの様子で、福之助を見ていた。
「あのロボット、狐(きつね)でも憑いたのかい?」
「ときどき、ああなるんです。なにかがとりつくんです。」
「高野山に行って、取ってもらったほうがいいよ。」
「そうですね。」
福之助は、我を忘れて狂ったように踊っていた。
女の子も、福之助の真似をして踊りだした。
隣のテーブルに座って、メッセンジャーを楽しんでいた白人の男も、
「オゥ〜、ショ〜ケン!」と言って、踊りだした。

 猫も杓子も フラフラフララ〜 ♪ 右も左もフラフラ〜フララ〜 ♪ 
 もうじき第三世界が来るぜ〜〜〜 ♪


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