アニーは、慌てて駆け寄った。 「あっ、ごめん。だいじょうぶ!?」 福之助の目玉は、クルクルと回っていた。」 「お〜〜〜、強烈〜!」 「ごめん、ごめん。」 「なにぃ、今の?」 「高電圧の電撃キックよ。心臓麻痺を起こさない程度の強さなんだけどなあ。まだちょっと強かったかしら?」 福之助は、よろよろと起き上がった。 「あ〜〜、びっくりした!」 アニーは、ブーツのダイヤルの目盛りを回した。 「ひとつ下げたわ。これで大丈夫かしら?」 福之助の目を見て、右目でウインクした。福之助は、二歩下がった。 「もう結構!それでオッケーです!」 「そうかなあ…」 アニーは、不安な顔をしていた。福之助は頭を両手で押さえていた。 「まだ、頭痛が…」 姉さんが、横から口を出した。 「お前が、でれでれぼけ〜〜っとしてるからだよ。」 「そりゃあないよ、姉さ〜ん!」 アニーは、きょん姉さんを見て微笑んだ。 「まあ、単なる偵察だから、こんなものを使う必要はないわね。」 アニーと姉さんは、ほぼ同じ背格好だった。 「わたしたち、なんか似てるわね。」 きょん姉さんは、少し照れた。 「そうですかあ?わたし、そんなミニスカート似合わないわ。」 「そうかしら、きっと似合うわ。あげましょうか?」 「けっこうです、けっこうです。」 福之助は、ニヤニヤ笑って聞いていた。 「姉さん、たまにはいいんじゃない?」 「おまえ、余計なこと言うんじゃねえよ!」 「すみません。」 姉さんは、改めてアニーに質問した。 「わたしたちの任務って、ただの偵察なんですか?」 「ええ、そうです。龍次とニート革命軍の偵察です。」 「何を偵察するんですか?」 「詳しくは、基地で。」 「基地?」 「高野山内に転軸山(てんじくさん)森林公園キャンプ場というのがあります。そこが基地です。」 「ああ、知ってます、そこ。」 「のんびりと、バーベキューでもしながら。」 姉さんの目は、大きく見開いた。 「えっ、そんなのありなんですか?」 「もちろんですよ。キャンプ場ですから。」 「わ〜〜、ラッキー!」 姉さんの脳裏には、すっかり仕事のことは、どこかに飛んでいた。 「いい仕事だなあ〜。」 「じゃあ、早速行きましょう!」 アニーは、しなやかに指差した。そこには、並列二輪の立ち乗り電動セグウェイが三台あった。 「あれでですか?」 「ええ、狭い坂道は、あれがいちばんいいんですよ。」 「わたし、乗ったことないけど、乗れるかなあ?」 「だいじょうぶです。自転車と違って、電動セグウェイ本体がバランスを取るので、誰でも乗れます。」 「わかりました。ところで、バーベキューなんですけど?」 「はい、何でしょうか?」 「肝心の肉や、たれや野菜や飲み物などは、あるんでしょうか?」 「彼が、後からクルマで持ってきます。」 「果物も?」 「ええ、彼に頼めば何でも。」 「わ〜〜、素敵ぃ〜〜〜!」 「あなたのクルマも、彼が見張っていますので、安心してください。」 「あの忍者の方が?」 「はい。」 「じゃあ、行きましょう!」 きょん姉さんは、すっかりうきうきの上機嫌になっていた。福之助は、あきれた顔で、姉さんを見ていた。 「食いしん坊だなあ〜。」 「なんだって!」 福之助は、少し不安な顔になっていた。 「ちょっと待ってください。」 セグウェイの前まで歩いて行った。 「乗れるかなあ?」 アニーがやってきた。 「乗れるわよ。お手本を見せてあげるわ。」 アニーは、セグウェイのスイッチを入れ、ちょこんと乗って軽く走ってみせた。 姉さんも、ちょこんと乗って、そして軽く走った。 「な〜〜んだ、簡単じゃん。」 福之助も、おそるおそる乗ると、前に走り出した。 「止まるときどうするの〜〜!?」 アニーが、「ハンドルを、前に引くの。」と言うと同時に、ドーンと音がした。 「うわ〜〜〜!」 福之助のセグウェイは、宿坊の壁に激突して止まっていた。福之助は、尻餅をついていた。 「あたたたたたたた… 姉さんがやってきた。 「お前って、ドジだねえ。そんなの、直感で分かんじゃないかよ。」 アニーも、慌ててやってきた。 「ごめん、ごめん。そのくらい感覚で分かると思って。」 福之助は、少し怒っていた。 「ロボットには、直感と感覚とか、そんなものはないんですよ。訓練してプログラムを作らないと駄目なんです。」 姉さんとアニーが、福之助を引っ張り起こした。 「ありがとうございます。」 福之助は、二人の前で、5分ほど訓練した。 「これで、大丈夫です。」 姉さんが、一言ぼやいた。 「手が焼けるね。」 その一言に、福之助が答えた。 「手が焼ける?どちらの手も焼けてませんけど?」 「さあ、行くよ。」 「姉さんは、時々おかしなこと言いますねえ。」 アニーたちは、楽しそうに出発した。 若者は、「気をつけて!」と言って手を振った後、携帯電話を取り出した。 「チェックメイトキングツー、こちら、卍根来(まんじねごろ)セブン…」
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