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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第33回   セグウェイ
アニーは、慌てて駆け寄った。
「あっ、ごめん。だいじょうぶ!?」
福之助の目玉は、クルクルと回っていた。」
「お〜〜〜、強烈〜!」
「ごめん、ごめん。」
「なにぃ、今の?」
「高電圧の電撃キックよ。心臓麻痺を起こさない程度の強さなんだけどなあ。まだちょっと強かったかしら?」
福之助は、よろよろと起き上がった。
「あ〜〜、びっくりした!」
アニーは、ブーツのダイヤルの目盛りを回した。
「ひとつ下げたわ。これで大丈夫かしら?」
福之助の目を見て、右目でウインクした。福之助は、二歩下がった。
「もう結構!それでオッケーです!」
「そうかなあ…」
アニーは、不安な顔をしていた。福之助は頭を両手で押さえていた。
「まだ、頭痛が…」
姉さんが、横から口を出した。
「お前が、でれでれぼけ〜〜っとしてるからだよ。」
「そりゃあないよ、姉さ〜ん!」
アニーは、きょん姉さんを見て微笑んだ。
「まあ、単なる偵察だから、こんなものを使う必要はないわね。」
アニーと姉さんは、ほぼ同じ背格好だった。
「わたしたち、なんか似てるわね。」
きょん姉さんは、少し照れた。
「そうですかあ?わたし、そんなミニスカート似合わないわ。」
「そうかしら、きっと似合うわ。あげましょうか?」
「けっこうです、けっこうです。」
福之助は、ニヤニヤ笑って聞いていた。
「姉さん、たまにはいいんじゃない?」
「おまえ、余計なこと言うんじゃねえよ!」
「すみません。」
姉さんは、改めてアニーに質問した。
「わたしたちの任務って、ただの偵察なんですか?」
「ええ、そうです。龍次とニート革命軍の偵察です。」
「何を偵察するんですか?」
「詳しくは、基地で。」
「基地?」
「高野山内に転軸山(てんじくさん)森林公園キャンプ場というのがあります。そこが基地です。」
「ああ、知ってます、そこ。」
「のんびりと、バーベキューでもしながら。」
姉さんの目は、大きく見開いた。
「えっ、そんなのありなんですか?」
「もちろんですよ。キャンプ場ですから。」
「わ〜〜、ラッキー!」
姉さんの脳裏には、すっかり仕事のことは、どこかに飛んでいた。
「いい仕事だなあ〜。」
「じゃあ、早速行きましょう!」
アニーは、しなやかに指差した。そこには、並列二輪の立ち乗り電動セグウェイが三台あった。
「あれでですか?」
「ええ、狭い坂道は、あれがいちばんいいんですよ。」
「わたし、乗ったことないけど、乗れるかなあ?」
「だいじょうぶです。自転車と違って、電動セグウェイ本体がバランスを取るので、誰でも乗れます。」
「わかりました。ところで、バーベキューなんですけど?」
「はい、何でしょうか?」
「肝心の肉や、たれや野菜や飲み物などは、あるんでしょうか?」
「彼が、後からクルマで持ってきます。」
「果物も?」
「ええ、彼に頼めば何でも。」
「わ〜〜、素敵ぃ〜〜〜!」
「あなたのクルマも、彼が見張っていますので、安心してください。」
「あの忍者の方が?」
「はい。」
「じゃあ、行きましょう!」
きょん姉さんは、すっかりうきうきの上機嫌になっていた。福之助は、あきれた顔で、姉さんを見ていた。
「食いしん坊だなあ〜。」
「なんだって!」
福之助は、少し不安な顔になっていた。
「ちょっと待ってください。」
セグウェイの前まで歩いて行った。
「乗れるかなあ?」
アニーがやってきた。
「乗れるわよ。お手本を見せてあげるわ。」
アニーは、セグウェイのスイッチを入れ、ちょこんと乗って軽く走ってみせた。
姉さんも、ちょこんと乗って、そして軽く走った。
「な〜〜んだ、簡単じゃん。」
福之助も、おそるおそる乗ると、前に走り出した。
「止まるときどうするの〜〜!?」
アニーが、「ハンドルを、前に引くの。」と言うと同時に、ドーンと音がした。
「うわ〜〜〜!」
福之助のセグウェイは、宿坊の壁に激突して止まっていた。福之助は、尻餅をついていた。
「あたたたたたたた…
姉さんがやってきた。
「お前って、ドジだねえ。そんなの、直感で分かんじゃないかよ。」
アニーも、慌ててやってきた。
「ごめん、ごめん。そのくらい感覚で分かると思って。」
福之助は、少し怒っていた。
「ロボットには、直感と感覚とか、そんなものはないんですよ。訓練してプログラムを作らないと駄目なんです。」
姉さんとアニーが、福之助を引っ張り起こした。
「ありがとうございます。」
福之助は、二人の前で、5分ほど訓練した。
「これで、大丈夫です。」
姉さんが、一言ぼやいた。
「手が焼けるね。」
その一言に、福之助が答えた。
「手が焼ける?どちらの手も焼けてませんけど?」
「さあ、行くよ。」
「姉さんは、時々おかしなこと言いますねえ。」
アニーたちは、楽しそうに出発した。
若者は、「気をつけて!」と言って手を振った後、携帯電話を取り出した。
「チェックメイトキングツー、こちら、卍根来(まんじねごろ)セブン…」


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