「秋だねえ。空が高いねえ。」 「空が高い?」 山の木々の匂いのする、秋の朝の爽やかな乾いた空気のなかを、サイドワインダーは走っていた。 「空は、いつも同じ高さですよ。」 それに対する返事はなかった。 「やっぱり、風の匂いが都会とは違うねえ。」 「そうですねえ。」 「なっんだか、昨日の天気が嘘みたいだねえ。」 「そうですねえ。」 「何時だい?」 「九時半です。」 「ちょっと早いかな。」 「そうですねえ。」 慈尊院(じそんいん)の駐車場に入って行くと、茶髪の若者が右手で手招きしていた。よく見ると、昨日の忍者姿の男だった。 「こっちに、入れてください!」 屋根つきの駐車スペースに案内していた。 きょん姉さんは、言われた通りに駐車した。 サイドワインダーから降りると、若者が笑顔で話しかけてきた。 「アニーさんのところに案内します。」 姉さんは、びっくりした。 「お知り合いだったんですね。」 「ええ、まあ。部下です。」 若者は、黙って姉さんと福之助を宿坊に案内した。黙ってついて行った。 宿坊の前の庭で、アニーは赤い長めのブーツを履きミニスカートのいでたちで、シャドーキックボクシングをやっていた。 ときどき、華麗なハイキックが空を切っていた。 福之助は、思わず感激した。 「わぁお〜〜〜、かっこい〜〜!」 姉さんは、ペコリと頭を下げ挨拶した。 「はじめまして。」 アニーも、動きを止めて軽くウインクをして挨拶した。 「はじめまして。地球刑事アニーです。」 アニーの目は、少女漫画のヒロインのように、キラキラ星が光っていた。 福之助は、再び思わず感激した。 「ぅっわ〜〜〜、かわゆいぃ〜〜!」 それを見た姉さんが戒(いまし)めた。 「おまえ、なにデレデレしてんだよ。」 アニーが、福之助に近づいてきた。 「あっ、ちょうど良かったわ。」 福之助は、嬉しそうに返事をした。 「なっ、なんでしょうか?」 「それ、付けてくれない。」 アニーが軽く指差した方向には、大きな枕のようなものが二つ転がっていた。 「これですか?」 「そうよ。」 福之助は、それを拾った。 「なんだ、軽いなあ。」 「中は、発砲スチロールの粒だから。」 「で、どうするんですか?」 「輪に手を通して、肘まで入れて、しっかり持って。」 「こうですか?」 「こうやって構えて。」 アニーは、やって見せた。 「こうですね。」 「しっかり持っててよ。」 「はい。」 アニーの左回し蹴りが飛んできた。福之助の右腕の枕に当たった。続いて、右回し蹴りが飛んできて、福之助の左腕の枕に当たった。 「な〜んだ、枕じゃなくて、キックを受けるやつか。」 「だいじょうぶ?」 「だいじょうぶですよ、このくらい。これじゃあ、大の男は倒せませんよ。」 「じゃあ、次は凄いのいくわよ。」 「えぇ〜、どうぞ。」 アニーは、赤いブーツを右手で触ると、左脚で力強くハイキックを放った。 「わぉ〜〜!」 バシッと音がして、火花が飛び、福之助はアニーの純白のパンティを見ながら倒れこんだ。
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