アキラが膝をついて、紋次郎を抱え起こした。紋次郎の目は、クルクルとおもちゃのように回っていた。 「駄目だ、こりゃあ。完全なるバッテリー切れ。」 ショーケンは、少し笑っていた。 「バカなやつだなあ。」 龍次が、男に命じた。 「ロボット用の充電器、持ってきてくれ。」 「はい。」 男は、奥の方に取りに行った。男は、すぐに戻ってきた。 「はい。」 アキラが手を伸ばした。 「コンセントに繋いで。」 「はい。」 そして、紋次郎の胸の端子に、プラグを差し込んだ。端子の上のランプが青く輝き点滅を始めた。 「これで、よし!」 龍次が、紋次郎の目玉を覗き込んだ。 「どのくらいかかるの。」 「完全に無くなってたから、3時間くらいかな。」 「そんなにかかるんだ。」 「まあね。」 「食事でもしてください。大したものはありませんが。」 「じゃあ、頂こうかな。なっ、兄貴。」 「ああ。」 食事が終わって、テレビを見ながらくつろいでいると、龍次が将棋盤を持ってやってきた。 「アキラさん、どう一局。」 「ああ、いいよ。手加減しないよ。」 「わたしも。」 二人は、将棋を始めた。ショーケンは、テレビを見ていた。 ショーケンは、しばらくテレビを見ていたが、面白くなさそうな顔をして消した。それから、二人の将棋を眺めにやってきた。 「情けねえ王様だなあ。」 「なにが?」 「な〜〜んだよ、そりゃあ?端っこに逃げちゃって。王様の周りを金銀で固めちゃって。臆病者の王様だなあ。こんなのありかよ〜!」 アキラは黙っていた。 「性格が出るんだよな、将棋って、はっははは。」 「うるさいよ、兄貴。」 「義経みたいに、前に出んだよ。これじゃあ、遊びにも行けねいじゃねえかよ。」 「王様は、戦争中は、遊びになんか行かないの。」 「なんだよ、この王様。こんな臆病者の王様じゃあ、歩兵も可哀想だなあ。」 「そういう問題じゃないの。将棋知らない人は黙っててよ。」 「情けねえ王様だなあ〜〜〜!」 「うるさいな〜〜。」 「こんな将棋あんのかよ〜。」 「穴熊戦法って言うの。ちゃんとした戦法なの。」 「王様が、穴熊かよ。はっははは。」 「も〜〜、うぅさいな〜。あっち、行っててよ。」 龍次は笑っていた。 「お邪魔虫みたいだから、タバコでも吸ってくるか。」 ショーケンは、玄関まで行くと、置いてある灰皿の横の椅子に座り込んだ。紋次郎は、正座をして同じ姿勢で座っていた。 龍次の声がした。 「王手飛車取り!」 アキラの声がした。 「え〜〜〜、うそ〜〜!」 ショーケンは、紋次郎を見ながら、明日のことを考えていた。
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