20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第3回   しゃら♪らららららら♪
「兄貴、パトカーだ。」
警官が二人出て、道路をカメラで撮影していた。
「あれは、交通事故の後の現場検証だな。」
「ああ、良かった。」
「だったら、もうじき終わるよ。」
「じゃあ、ここでジュースでも飲んで待っていようよ。」
「そうだな。」
二人は大きな木の下に座り込んだ。バッグから缶ジュースを二本取り出し飲み始めた。
「オレンジジュースか。」
「もうないよ。」
十五分ほどで、パトカーはいなくなった。その間、クルマは一台も通らななかった。
「アキラ、行こうか!」
「どっちに行くの。」
登る方向を指差した。
「登りじゃ〜ん、いやだなあ。」
「大した登りじゃないよ、」
「舗装はしてあるけど、寂しい道だねえ。」
「そうだなあ。」
「歩いて行くの、ず〜〜っと。」
「しょうがねえだろう。」
「パトカーが来たら、やばいんじゃないの。」
「そうだなあ。」
「ヒッチハイクでもしようよ。」
「止まらないよ、こんなとこじゃあ。」
「なんで?」
「男二人じゃ、怪しんで止まらねえよ。」
「そういうもんなの。」
「そういうもんだよ。」
ショーケンは、携帯電話の電源を入れ、地図を見た。
「ここを真っ直ぐ行くと、下市町という町に着くな。」
「どのくらい?」
「8キロかな。」
「8キロ!わぁ〜大変だ。パトカーが来たら終わりだね。」
「タクシーとかは、走ってるわけがないしな。」
「こんなとこ、走ってないよ。」
<事故多し、スピード落とせ!>の看板があった。
「アキラ、救急車を呼ぼう。」
「なんだって?」
「携帯で救急車を呼ぶんだよ。」
「えっ、どういうこと!?」
「町まで運んでもらうんだよ。」
「町まで、救急車で。」
「お前、携帯で電話しろ。」
「なんて電話するの?」
「友人とハイキングをしてたら、友人が野イチゴを食べて腹痛を起こして倒れたって。」
「そんな嘘ついていいのぉ?」
「俺たち以外には分かんねえよ。」
「救急車って、お金取られるんじゃないの。」
「知ってるよ。」
ショーケンは、アキラに携帯電話を手渡した。
「県道215号線の貝原地区って言うとこだ。場所を、ちゃんと言えよ。」
遠くに、風力発電の風車が見えていた。
「ああ、分かった。」
アキラは、電話した。
「兄貴、すぐ来るって。」
「じゃあ、ここに座って待っていよう。」
「パトカー来ないかなあ?」
「そんときは、そんときだ。」
「なにか方法があるんだ。」
「ああ。」
十五分ほど待ったら、サイレンが聞こえてきた。
「兄貴、来たよ!」
ショーケンは、狭い歩道にうずくまった。アキラが大きく手を振った。
救急車は、彼らの前で止まった。
助手席から一人、救急隊員が出てきた。
「こちらの方ですか?」
アキラが言った。「そうです。」
ショーケンは、「いたたたた・・」と、苦しそうにうなっていた。
「歩けますか。」
ショーケンは「ええ、なんとか。」と答えた。
後ろのドアから、別の救急隊員が出てきた。先に出た隊員に「担架、出そうか。」と尋ねた。
ショーケンが、「大丈夫、歩けます。」と言うと、腹部を押さえながら自分で歩き出した。
救急車は、町の病院に向かって走り出した。サイレンが山々に鳴り響いた。
直後に、頭脳警察の猿狩り小次郎が上空を通り過ぎて行った。
どうにかなるさの、しゃら♪らららららら♪の風が吹いていた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 32722