アキラが、紋次郎の前に出てきた。 「ごめん、ごめん。あんときは悪いことしたよ。」 右手で紋次郎の肩に触れようとした。 「気安く触らないでください!」 「あっ、ごめん。」 「ほんとうは殴りたいところなんですが、補佐ロボットは人間に危害を加えるようにはできていません。」 「ああ、良かった。」 「あのことは、もういいです。わたしが未熟だったのです。」 「そぉだよ〜、あんなに簡単に騙されちゃあ、駄目だよ〜。な〜兄貴。」 ショーケンが出てきた。 「悪かったな、紋次郎!」 「いいんです。過ぎたことは。罪を憎んで、人を憎まずと言いますから。」 龍次は、3人の会話を聞いていた。 「どういうことですか?」 紋次郎は、アキラとショーケンを指差して睨んだ。 「この人達、ロボット泥棒なんです。」 アキラが慌てて説明した。 「違うよ〜〜、人に頼まれたんだよ。な〜兄貴。」 「ああ、そうだよ。」 「もうやってないよ。頭脳警察に追われて、とんでもない目に逢ったよ。」 「誰に頼まれたんですか?」 「兄貴、誰?」 「卍根来(まんじねごろ)の六角龍だよ。」 その言葉に、龍次は関心を寄せた。 「卍根来(まんじねごろ)の六角龍?」 龍次の隣にいた男も、その名前を知っていた。 「先生、どういうことでしょう。」 「さぁ〜〜?」 紋次郎が、大声を出した。 「せんせ〜い!」 龍次は、びっくりした。 「なんだね、いきなり?」 「わたしを、弟子にしてください!」 「弟子?」 「罪を憎んで、人を憎まずの極意を教えてください!」 「それはね、キリストの言葉だよ。」 「わたしは、この愚か者たちに騙されるほどの愚かロボットなんです。自分を諭(さと)したいのです。」 「諭(さと)す…」 「人の心を学びたいのです。お願いします、先生!なんでもします。体力もあります。」 「弟子ねえ…、でも、高野山によくロボットだけで入れたねえ。」 「はい。闇と大雨を待っていました。」 「この雷雨の中をねえ…」 「弟子にしてください!」 そう言うと、紋次郎は膝(ひざ)を突き、前屈みになり、ドンと倒れこんだ。龍次は慌てて、紋次郎の様子を見た。 「どうした、君!?」
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