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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第25回   愚か者よ!
小雨が降っていた。
「元気そうだなあ。からだ、大丈夫か?」
「かだらは、でんでん大丈夫だぁ〜!」
「かだら?でんでん?」
「からだって言うのかな。でんでんは、ぜんぜんって言うのかな。」
「紀州弁だなあ。」
「われ、関東弁だなあ!ちょっと待っとくれ、自分も関東弁に切り替えるさかい。よし、大丈夫だ。」
「その服、濡れるぞ。」
「大丈夫だよ。ビニールだから。」
「雨の中を大変だなあ。」
「おまえこそ、アルミの裸体で、服ないのかよ〜?」
「そんなものないよ。」
「可哀想になあ。ひどいところで働いてるんだなあ。」
「服なんて、邪魔だよ。」
「ロボット労働監督署に訴えたほうがいいぞ。」
「これでいいんだよ。」
「きっと主人が、血も涙もない、ひどい人なんだろうなあ。」
「主人は、そこにいるけど、いい人だよ。」
「あの人かよ〜〜!」
「そうだよ。」
「女の人かぁ、いいなあ。」
きょん姉さんが、「は〜〜い!」と言って、出てきた。
「なんか、私のこと言った?」
福之助が慌てて返事をした。
「いいえ、別に!」
ひょっとこ丸は、深く頭を下げた。
「はじめまして、わたし、彼の古き友ロボットの、ひょっとこ丸と申します。」
「ああ、そうなの。はじめまして。」
きょん姉さんは、名刺を渡した。いつもの建て前上の名詞だった。

 【 きょんぴぃ探偵事務所 葛城 今日子 】

ひょっとこ丸は、名刺を小さな声で読んだ。
「きょんぴぃ探偵事務所・・・」
福之助が、
「探偵家業って、いろいろあってねえ。大変なんだよ。」
「じゃあ、おまえも探偵かあ。」
「まあな。」
「こんなところで、何やってんだ?」
「ちょっとな・・」
姉さんが、口を出した。
「仕事の帰りなの。」
「そうなんですかあ。」
「ついでにここらあたり泊まって、ゆっくり見物して帰ろうと思ってね。」
福之助が、ひょっとこ丸に尋ねた。
「それで、おまえを思い出したんだよ。宿坊やってるんじゃないかと思ってね。」
「やってるよ。」
「じゃあ、一晩頼むよ。」
「ああ、いいよ。でも、宿坊だから、大した料理は出ないよ。栗ご飯とか、鮎の塩焼きくらしか。」
福之助が、きょん姉さんを見た。
「姉さん、どうする?」
「栗ご飯、鮎の塩焼き。いいね、いいねえ!」
「じゃあ、頼む。」
「フランスの高級オイルでも飲んで、昔話でもするか。」
「そうだなあ。」
「CPUのしびれる泣ける歌でも聞いてよ。おまえ、相変わらず、ヘビメタかよ?」
「ああ、アイアンメイデンだよ。」
「そうかあ、若いなあ。と言うか、古いなあ〜。初期メビメタだぞぉ。」
「おまえ、相変わらず、日本ロックのカリスマのショーケン?」
「そうだよ。愚か者〜〜!」
ひょっとこ丸は、胸のスピーカーからカラオケを流しながら、急に踊りだし唄いだした。

 愚か者よ〜〜〜  おまえの流した涙を受けよう〜〜〜 ♪
  愚か者よ〜〜〜 わたしの胸に頬をうずめて〜〜 今夜は眠れよ〜〜〜 ♪

「福之助も歌えよ。」
「歌詞が分かんねえよ。」
「今、赤外線信号で送るよ。」
「おっ、入った。」
福之助も、ひょっとこ丸の後から歌いだした。

 見果てぬ夢に 男は彷徨い〜 女はこがれる〜〜 ♪
  ルージュを引けば〜 偽りだけが いつも真実〜 それが〜 真実〜 ♪
   ごらん 金と銀の器をだいて 罪と罰の酒を満たした〜〜 ♪

ひょっとこ丸が、福之助を指差した。

 愚か者が街を走るよ〜〜〜 ♪

それを見て、福之助が、ひょっとこ丸を指差した。

 愚か者が街を走るよ〜〜〜 ♪

姉さんが、歌を止めた。
「あんたら、何やってんの?」
福之助と、ひょっとこ丸は、歌うのを止めた。ひょっとこ丸は、頭を下げた。
「失礼しました。ついつい嬉しくなって。」
福之助も、頭を下げた。
「きょん姉さん、ごめんなさい!」
「あんたら、めでたいロボットだねえ。はじめて見たよ。」
姉さんは、笑っていた。
カラスが、鳴きながら飛んで行った。



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