鶴丸隼人は、高野山に続く龍神スカイラインに向かって走っていた。右に農道があった。 「長居は無用、近道を行こう!」 そこは、約一年ぶりに通る道だった。 走る林道には、誰も走っていなかった。隼人は道路を横切って農道にオートバイを入れた。 「これで、だいぶショートカットになるぞ。」 山道には、大きな木の枝が上空を隠していた。 「これなら、猿狩り小次郎にも見つからないな。」 農道の出口から一キロメートルくらいのところに、赤青黄色の六角形の奇妙な建物があった。 「うん、あんな建物あったかなあ?」 好奇心の強い隼人は、大きな木の下にバイクを止めた。建物は、少し開けたところに建っていた。周りにはコンクリートの塀があった。門柱に幟旗(のぼりはた)がはためいていた。南無三光明邪悪殺滅と書かれてあった。 「南無三光明邪悪殺滅…、聞いたことないなあ〜、新興宗教か?」 門には、ドラゴンリバーシ教団と書かれてあった。隼人の忍者魂に火がついた。 「風魔忍者としては、見逃せないなあ。」 隼人はバイクのエンジンを止めると、静かな足取りで塀に向かった。塀の向こうを確認すると、素早く塀に登り、敷地内に飛び降りた。 警報が鳴るかと思ったが、反応はなかった。 「おや、たやすく入れちゃった!」 建物は、六角形のピラミッド形式の段々の三階建てになっていた。梯子(はしご)がついていた。 「非難梯子か?こりゃあいいや。」 隼人は、やすやすと三階の屋上まで登っていくことができた。真ん中は、明かり取り天井になっていた。 「こりゃいいや。」 隼人は、明かり取り天井に静かに近づくと、用心深く覗き込んだ。 二十人近くの者が、何かをやっていた。隼人は耳を澄ました。 『それでは、ドラゴンルーレットを始めます!』 ドラゴンルーレット…? 『みなさん、賭けてください!』 みんなは、ルーレットのように、アルファベットの書いてある丸い駒を、賭ける場所に置いた。 『それでは始めます!』 奇妙な、お経が流れ始め、中央の六角形スクリーンのオセロゲーム盤の赤・青・黄の駒が、勝手にオセロゲームを始めた。 おもしろいなあ… ゲームは三分ほどで終わった。 『呪い番号は、赤の一八です!』 呪い番号??? 『当たったのは、S・Hさんです!この班を導いてくれる霊感者は、S・Hさんです!』 みんなは拍手をした。 みんなの前の少し段差のある床が観音開きに開き、何かがせり上がってきた。赤い剣を持った鬼だった。みんなは手を合わせ一斉に唱え始めた。 『南無三光明邪悪殺滅(なむさんこうみょうじゃあくさつめつ)!』 隼人には、異様な雰囲気だった。 『赤の霊気が宿ったら、第二班は出発してください。』 呪文は続いていた。隼人は、下に降りた。塀の外に出た。
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