集会所にヨコタンが入ってきた。準幹部の忍が、幹部のヨコタンに挨拶した。 「お帰りなさい!」 「只今!」 ヨコタンは、道路で逢った若者を見た。 「あっ、来てる来てる!」 忍が説明した。 「さっき、隼人さんが連れて来ました。」 「隼人さんは?」 「野迫川村(のせがわむら)に、オートバイで行きました。」 「野迫川村(のせがわむら)に、オートバイで?」 「龍次さんが、野迫川村(のせがわむら)に行った、と言ったら、心配して追いかけて行ったんです。龍次さんは、ショーケンさんと、ショーケンさんのファンの女性と四人で、電動四輪自転車で行きました。」 「え〜〜、電動自転車で四人で?」 「隼人さん、大丈夫だと言って、武器も持たずに行きました。」 「そうなの…」 「止めたほうが良かったでしょうか?」 「行ったものは仕方ないわねえ。隼人さんは、風魔忍術と達人だから大丈夫よ。」 「え〜〜〜、隼人さんて、風魔忍術と達人だったんですか!?」 「そうよ。知らなかったの?」 「ちっとも知りませんでした。何かの武術をやる人とは知ってましたけど。まさか忍術とは。」 「大丈夫よ、彼は頭のいい忍術使いだから。」 「ヨコタンは、彼の忍術を知っているんですか?」 「数回見たことあるわ。」 「敵と戦ってるところをですか?」 「ええ、猿狩り小次郎や、ハルと。」 「ハルと!?」 「ハルに飛び乗って、火炎瓶を投げ込んでるのを見たわ。」 「あの大きなハルにですか!?」 「ハルが爆発する寸前に飛び降りたわ。ひとつ間違えたら、きっと死んでたわ。まるで、特攻隊みたいだったわ。」 「さすが、ニート特攻隊の隊長だなあ〜。」 「だから、小次郎くらいだったら大丈夫よ。」 座っていた若者が、お腹を押さえてうずくまった。 ヨコタンはびっくりした。 「どうしたの?」 「いえ、何も…」 若者のお腹が、ぐ〜っと鳴った。 「あなた、お腹が空いてるのね。お昼は食べたの?」 「いえ、食べてません。」 ヨコタンは、彼に近寄ると、食券を渡した。 「定食の食券しかないけど、食堂に行って食べてらっしゃいよ。食堂は知ってるでしょう?」 「はい。」 「いいから、早く行きなさい。白い建物よ。」 「ありがとうございます!」 若者は急いで行こうとした。 「あっ、ちょっと待って!名前、何ていうの?」 「花岡実太(はなおかじった)です。」 「鼻をかじった?」 「花岡、実太です。」 「ああ、分かったわ。はなおか、じったさんね。」 「漢字、書きましょうか?」 ヨコタンは、ホワイトボードを指差した。 「じゃあ、そこのボードに書いて。」 若者は素早く書いた。 「花岡実太(はなおかじった)さんね。分かったわ。早く行きなさい。」 「はい!」
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