集会所に、人間村の住人が飛び込んできた。 「ポンポコリンさ〜〜ん、お腹が痛〜い!」 「胃が痛いの?それとも腸?」 「腸!」 「何を食べたの?」 「テーブルの上にあった、ハンバーグ!」 「あなたの家の?」 「そう!」 「そのハンバーグ、今日作ったの?」 「ううん。」 「ううんって?」 「テーブルの上にあったんですよ。」 「テーブルの上にあった?いつからあったの?」 「分からない。とにかくあったんですよ。」 「分からない?とにかくあった?あなたが作ったんでしょう?」 「たぶん、そうです。」 「たぶん?」 「朝からあったのかも知れないし、それ以前からあったのかも知れない。覚えていないんですよ。」 「何それ、どういうこと?」 「いちいち確認してないから、分からないんですよ。」 「どういうことですか?食べ物を管理してないの?」 「管理?」 「古いとか新しいとか、古かったら捨てるとか。」 「勿論、古かったら捨ててますよ。でも分からないときがあるんですよ。」 「分からないときがある?何、それ!?」 「お腹が空いてると、何も考えないで食べちゃうんですよ。」 「小学生以下ね。臭(にお)いとかで分かるでしょう!」 「臭(にお)いとか嗅がないで食べたもので。」 「なぁに、それ?犬や猫だって、食べる前には臭いくらい嗅ぎますよ。」 「そうなんですか?」 「動物の基本です。」 「そうなんですか?」 聞いていた忍(しのぶ)が、呆(あき)れて口を出した。 「バッカじゃねえのかよ!」 男は恐縮していた。 「自分でも、馬鹿だと思っています。」 「なんだ、そりゃあ?」 ポンポコリンも呆れ果てていた。 「とにかく注意してくださいよ〜!」 強い口調になっていた。 「自分を守れるのは、自分だけですよ!」 男は、お腹を両手で押さえて蹲(うずくま)った。 「痛ててててて!」 忍は怒った。 「ったく、しょうがねえなあ〜!」 「兎に角、ベッドに寝かせましょう!」 ポンポコリンは、治療室のベッドに連れて行った。 「変なやつがいるよな〜〜!バッカじゃねえのか!」 ポンポコリンが、治療室で怒っていた。 「自己管理と衛生管理、子供じゃないんだから、しっかりしてくださいよ〜!」 「はい!」 「食べて横になるのはいいんですが、そのまま寝ないでくださいよ。」 「えっ、どうしてですか?」 「腸に下がらないでしょう。いつまでも食物が胃の中に留まっていると、胃が悪くなります。」 「どうしたらいいんでしょう?」 「考えたら分かるでしょう。腸に下がるまで起きているんですよ。」 「あっ、そうか。」 「食べてから横になるときは、右半身を下にしてください。」 「えっ、どうしてですか?」 「胃の出口が、右にあるからですよ。」 「あ〜〜、そうなんですか。知りませんでした。」 「そんなことも知らないんですか?中学生でも知ってますよ。」 「すみません!」 「食べることは、人間にとって一番危険なことなんですよ。」 「一番危険なこと?」 「外のものを体内に入れるわけですから。危険なものを食べると死にます。」 「なるほど!」 「あなた、そんなことも分からないで、今まで生きてきたんですか?」 「はい。」 忍は、呆れ果てていた。 新しく来た若い男も、呆れた様子だった。 「アメリカ人は、お腹が痛いときには、コーラを飲むんですよ。」 「えっ、そうなの?」 「ロスに行ったときに、お腹が痛くなって、病院に行ったんです。そしたら、コーラが出てきて、飲んだら良くなるって言われて、びっくりしたんですよ。」 「え〜〜〜、ほんとぉ!?」 「ほんとうに、ほんとなんです。」 「コーラ、びっくり!」
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