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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第204回   隼人 vs ムサシ
その頃、ニート特攻隊の隊長・鶴丸隼人は、野迫川村(のせがわむら)に向かう林道を、忍のモトクロス・オートバイで走っていた。
初秋の空は、澄んで晴れていた。
「怖いくらいに晴れ渡っているなあ…」
隼人に不安がよぎった。
「こんなに澄んでると、空から丸見えだ。」
隼人は、頭脳警察の猿狩り小次郎を警戒していた。
後方から、ヘリのローター音が聞こえてきた。隼人は、バイクを止め、振り返って上空を見た。不安は的中した。
「ちぇ、小次郎だ!」
猿狩り小次郎は、隼人の上空で止まった。
「うん、なんだ、俺かよ!?」
隼人は、自分も指名手配の身だということを思い出した。猿狩り小次郎から、追跡ロボット・ムサシが放たれた。
「しまったぁ〜!」
隼人は、急発進した。
空を飛べるムサシは早かった。隼人に追いつくと、飛びながら声を発した。
『止まってください!顔を確認させてください。一般市民には危害を加えません!』
隼人は、脇道に入った。
「やばいなあ〜、これじゃあ薮蛇(やぶへび)だぁ!」
ムサシは、なおも追いかけてきた。
「くそ〜〜〜ぅ!」
ムサシは上空で大きな音声で警告していた。
『直ちに止まって、顔を確認させてください!』
隼人は、アスファルトのない荒れた道を、スピードを速めたり緩めたりしながら走っていた。
『止まりなさい!』
道が細くなってきた。隼人は不安を感じた。ススキが道の両側を埋めていた。
「やばいなあ〜!」
『最終警告です!従わないと危害を加えます!』
道が無くなったので、隼人はバイクを止めた。前方は崖になっていた。
「くそ〜〜、山道だったらな〜!」
止まった場所は、山間の場所ではなく、広く開けたススキの生い茂る場所だった。
隼人は、エンジンをふかし、バイクを反転させた。前方、十メートルくらいの所に、ムサシが逆噴射で降りてきた。電撃銃を構えていた。
隼人は、バイクから降りた。ムサシが、一歩一歩と迫ってきた。
『顔を確認させてください!』
隼人は両手をあげた。
「降参、降参!」
隼人は、背中のリュックを背から外すと、中から紙袋を取り出した。
『武器ですか?』
「その通り!この中に、電撃手投げ弾が入っているんだよ。」
隼人は、紙袋をムサシに見せるように足元から約一メートル先に置いた。
「物騒だから、その鉄の足で踏み潰してよ。」
『分かりました。』
ムサシは、紙袋を左の足で踏みつけた。
「あほ!」
隼人は、崖の方向に逃げた。
『待て!』
ムサシも崖に向かって駆け出した。
『うわ〜〜〜!』
ムサシが踏みつけたのは、磁石だった。重い磁石を足の裏にくっつけたままのムサシは、バランスを崩して転び、崖から落ちていった。
隼人は、崖の下を見た。ムサシが、傷ついた虫のようにもがいていた。
「その磁石は、どう頑張ったって外れねえよ!」
ムサシは、助走してジャンプしなければ、飛ぶこともできなかった。
「それじゃあ、飛ぶのも無理だな。」
ススキをくすぐる、ほらほらほらの、とっても愉快な風が吹いていた。



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