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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第202回   ボンクラの姉さん
きょん姉さんの鼻が、ピクッと動いた。
「うん、焼き芋の匂いだ!」
姉さんは窓際に行き、外を眺めた。
隣の隣のログハウスのバーベキューエリアでサツマイモを焼いていた。
「あれか〜〜。」
福之助がやってきた。
「姉さん、どうしたんですか?」
「焼き芋だよ〜〜。おいしそうだなあ〜。」
「今、食べたばっかりじゃないですか。」
「あれは、主食だろ。」
「今度のは何ですか?」
「サップリメントだよ。」
「サップリメント!?」
「サプリメント!」
「でっかいサプリメントですねえ〜!」
「うるさいな〜。」
レモンティーを飲んでいたアニーも、飲むのを中断してやってきた。
「焼き芋ですか?」
「おいしそうですよねえ。」
「彼に頼みましょうか?」
「忍者の彼ですか?」
「ええ。」
「そういえば、あの人遅いですねえ。」
「今日は、二時ごろになるって言ってました。」
「ああ、そうですか。あの人、どういう人なんですか?」
「お寺の方です。山田太郎って言ってました。」
「山田太郎さん、なんだか判子みたいな超平凡な名前ですね。慈尊院(じそんいん)の方ですか?」
「はい。何か?」
「いえ、目つきが刑事とか探偵ぽかったもので。」
「ああ、そうですかあ。だったら、そうかも知れませんねえ。」
「ええ!?」
「高野山警察の忍者隊・月光かも知れません。」
「え〜〜!?まぁじ〜?」
「よく分からないんです。」
「よく分からない?」
「はい。こっちに来たら、手伝いがいるってことだけで、それ以上は。」
「そうなんですか。」
「とにかく味方ですよ。」
「そうですね。」
アニーは、視線を変えた。
「あっ、ダチョウだわ!」
「ぅわ〜、ほんとだ!」
大きなダチョウが、小さなリアカーを引いて歩いていた。白旗を持った少女がやってきて、リアカーに乗り込んだ。リアカーには椅子が備え付けてあった。ダチョウは、近くの木をトントンと嘴(くちばし)で叩いてから歩き出した。
アニーは、注意深くダチョウの動きを見ていた。
「さっきのノックは、ダチョウだったんじゃないかしら?」
「そうかも知れませんねえ。あのダチョウ、どこに行くんですか?」
「ダチョウ牧場が、人間村の奥にあります。そこじゃないかしら?」
「ダチョウ牧場?」
少女は、ダチョウの手綱を引いていなくなった。ログハウスの前の道を通り過ぎて行った。
「いいなあ〜、高野山は、なにやらメルヘンチックで。」
「そうですかあ?」
「こんな場所はないですよお。」
「そうですかねえ?」
「焼き芋もあるし。」
「焼き芋は、どこだってありますよ。」
「高原で食べる焼き芋、とくに高野山の焼き芋はおいしそうだなあ〜。」
「どうしてですか?」
「結界で食べる焼き芋は、きっとおいしいですよ〜。」
「そうですかねえ?」
福之助がぼやいた。
「けっかいな、姉さん!」
姉さんは福之助の目を睨んだ。
「くっだらねえ〜〜ぇ!」
姉さんは、アニーに頼んだ。
「彼が、やってきたら、芋を注文しといてくださいよ。」
「分かりました。」
姉さんの目は、きらきらと少女漫画の主人公のようにキラ星が飛び出していた。
「たのしみだなあ〜〜。」
姉さんは、すっかり焼き芋のことで、頭がいっぱいになっていた。
福之助は、姉さんを睨んだ。
「そんなに食べてばかりいたら、太ってボンクラになりますよ。」
「ぼんくら?…盆暮れの間違いだろう?」
「ぼんくれって何ですか?」
「わたし、食べ物のことでは、怒りたくないからさ〜。」
「えっ?」
「盆暮れって、言っておくれよ〜、福ちゃわ〜〜〜ん!」
「気持ち悪いな〜〜!変な声出してぇ〜!」
「言っておくれえよ〜〜、福ちゃわ〜〜〜ん!」
「気持ち悪いなあ〜〜!わたしは、茶碗じゃありませんよ!」
姉さんは、右手の人差し指で福之助の胸を強く押した。
「ねったら、福ちゃん!」
「気持ち悪いな〜、気安く触らないでくださいよ!」






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