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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第201回   猪の焼肉定食
アキラとヨコタンが、食堂に辿り着いたとき、五十席ある食堂は満席だった。
「満席だわ。」
「どうしよう。」
「外のテーブルで食べましょう。」
「そうだね。」
アキラは、賄(まかな)いの男に尋ねた。
「今日の定食は、何?」
「猪(いのしし)の焼肉定食です。」
「いのしし!?」
二人は、定食を注文して待った。すぐに出てきたので、それを持って外に出た。
色々な木の香りの風が、そよそよと木のテーブルの上を撫でていた、まるで死んでしまった木に挨拶するように。それはそれは、蟻ん子が吹き飛ばされるような風ではなかった。たとえ、蟻夫が風で飛ばされ川に流されたとしても、蟻子は涙を流しはしないだろ。なぜなら、蟻とはそういうものだから。
そのジェントルな風に葉を揺らしているイチョウの木の下に、待ちぼうけのテーブルはあった。
「ここでいいよ。」
「ここにしましょう。」
テーブルの両サイドには、スチールと木材のありふれたガーデンベンチが置いてあった。
食堂脇の川は、いつものように、いつもの音を奏でながら流れていた。
「ここの川は、いつもショパンを演奏してるわ。」
「ショッパン?あ〜〜、知ってる、学校の音楽の時間に習った!」
「ショッパンじゃないわ、ショパン。」
「あ〜〜〜、そうだそうだ。ショッパンは食べ物だった!」
「面白いわ〜、アキラさんって。」
ヨコタンは、なぜか川の流れを見ていた。
「何をくよくよ川端柳、水の流れを見て暮らす…」
「何、それ?」
「坂本竜馬が即興で作った歌の一節。」
「さかもとりょうま…、それテレビで見たことあるよ。むか〜〜〜し。」
「アキラさんは、あまり歴史とかには興味ないのね。」
「まあね。昔話しには、興味ないね。」
「あっ、そうだ!」
「どうしたの?」
「お茶、もらってきて。」
「あ〜、そうだね!すぐに持ってくるよ。」
アキラは、アルミのお盆にのせて、すぐに持ってきた。
「はい!」
「ありがとう!」
お盆には、無花果(いちじく)ものっていた。
「何、これ?」
「オマケのデザートだって。」
「ああ、そうなの。」
「無花果(いちじく)なんて、久しぶりだなあ〜。」
ヨコタンは、箸を持った。
「じゃあ、食べましょう!」
アキラも箸を握った。なぜか同時に「いただきま〜〜〜す!」と言った。
アキラは、いつものクセで、オカズから食べ始めた。
「猪(いのしし)なんて、食べたことないな〜。」
「そうなの?」
「これが猪(いのしし)の肉かあ〜〜。」
アキラは、ゆっくりと噛んだ。
「うん、いい味してる!ここの料理、センスいいなあ〜。」
「アキラさんは、料理するの?」
「得意ってほどじゃないけど、得意だよ。」
「変な答え。」
「へへ〜〜、そう?」
「どういうのが得意なの?」
「何でも作るよ。材料さえあれば、適当に。」
「適当に?じゃあ、頭がいいんだ。」
「えっ、そうなの?」
「適当に作るなんて、凄いわ。」
「そうかなあ〜?」
「料理は頭を使うわ。とってもインテリジェンスな仕事よ。一番得意なのは、何?」
「五目チャーハンかな?」
上空からプロペラ音が聞こえた。二人は、上空を見た。
「おっ、頭脳警察の無人偵察機だ!」
「不愉快な飛行機だわ。」
「そうだねえ。」
「何を偵察してるのかしら?」
「何だろうね?」
紋次郎が、「こんにちわ〜!」と言って、通り過ぎて行った。集会所の方に向かっていた。
「あれっ、あいつ、脚直ってる?」
「ほんとだわ〜?」
もうじき秋の少し乾いたメランコリックな風が、光り輝きながら吹いていた。


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