20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第20回   爆弾低気圧
「姉さん、人間村です。」
さわやかな風に包まれてた村の風景は、山々が村を抱くように囲み、照れ屋の母のほっぺのように、ところどころ紅葉に色づいていた。
手前には、まだ青々とした牧草地帯が広がっていて、遠くで山羊(やぎ)や牛たちが草を食(は)んでいた。
道端のところどころのコスモスが彩りを添えていた。
「綺麗な村だねえ。」
「そうですねえ。」
「こうやって、四季折々の風景が、人の心を和ませているんだねえ。」
「そうですねえ。」
「あんた、そうですねえそうですねえ。しか言えないの。」
「すみません!そういうのは、ロボットには、分かりません。」
「そうか…、それは残念だ!」
大きな看板があった。
 < ニート革命軍 人間村 我々は大地に引きこもる! >
「凄いねえ。さすがに高野山だねえ。逆利用して、錦の御旗にしてるよ。」
「さすがに、世界遺産。国際人権団体がバックにありますからねえ。」
「そうだね。これじゃあ、うかつに手は出せないよ。」
「あたまいいですね。」
「さすがに、戦略家の龍次だねえ。先の先を的確に読んで動いてるよ。』
「そうですねえ。」
『科学者と言うより、政治家だな。』
「そうですねえ。」
「政治コンピュータ<スーパーマザー>と、人間の知恵比べだな。』
「そうですねえ。」
「また、そうですねえ。だけになってるじゃん。」
「あっ、すみません。高度な質問なもので。」
「なにしろ、高野山は義経が逃れたところだからな。」
「そうなんですか。」
「あれえ、違ったかな?」
村には、丸い建物が沢山あった。
「なあんだい、あれ?」
「人の家じゃないですか。」
「入り口や窓があるから、そうなんだろうね。」
「ジャパンドームハウスの、強化発泡スチロールの家じゃないんですか。」
「うん、そうだね。」
「空気の断熱効果で、けっこう温かいらしいですよ。」
「あれじゃあ、雪だ積もっても大丈夫だね。」
「こういうところは、いいんじゃないですか。ここまで運ぶのも楽だし。」
「姉さん、気圧が下がってきました。爆弾低気圧みたいです。」
「あっ、そう。そりゃあ大変だ。」
「どうしましょう。」
「引き返して、宿でも探そうか。」
「そうですね。山の天候は変わりやすいので急ぎましょう。」
「真っ直ぐ下ると、どこに行くんだい?」
「ちょっと、待ってください。」
福之助は、カーナビの画面を操作しながら見ていた。
「ええ〜っと、アテネです。」
「なんだって?」
「アテネ…」
「アテネ!?」
姉さんは、自動車(クルマ)を止めて、カーナビの画面を覗き込んだ。
「アテネが、どうして日本にあんだよ〜?」
福之助が指をさした。
「ほらね。」
「ほんとだ。なんだい、これ?」
「キャンプ場ですね。」
「日本の名前をつけろよなあ〜〜。」
「そうですよねえ。」
「アテネを抜ければ国道370に出るけど、道が狭そうだしなあ。距離もあるし…」
「そうですねえ。」
「やっぱ、引き返そう!」
「それがいいですね。熊でも出たら大変ですよ。」
「熊ぐらいだったら、バルカン砲で脅してやるから大丈夫だよ。」
「バルカン砲って、戦闘ヘリについてるやつですか。これ、そんなのが装備されているんですか!?」
「そうだよ。そこらへんのものだったら、一瞬に砕け散っちゃうよ。」
「駄目ですよ、そんなの使っちゃあ〜!人に当ったらどうするんですか!?」
「冗談だよ。そんなのがついてるわけないだろう。」
「ああ、びっくりした。」
「あんたって、真面目だね。」
「ロボットですから。」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 32722