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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第199回   PYG
テレビでは、相変わらず、猿人間キーキーのニュースをやっていた。
『猿人間キーキーは、自分とは異なる意見で、突然に興奮し、キーキー声を発しながら噛みつくそうです。大変に危険ですので、絶対に逆らわないでください。噛みついてきたら、大声を出して逃げてください。』
きょん姉さんは、おいしそうに炊いたばかりのご飯を食べていた。
「おいしいなあ〜〜。」
梅干だけで食べていた。
アニーは、姉さんが作った牛肉とアスパラのオイスター炒めをオカズにして食べていた。
「タンパク質も食べたほうがいいですよ。」
「ああ、そうですね。じゃあ、卵をかけよ〜〜っと!」
福之助は、隣に座って姉さんを見ていた。
「姉さんは、単純でいいなあ〜〜。」
「うるさいなあ〜!」
「好物のトマトは食べないんですか?」
「後で食べるの!」
「そうですか。」
「いちいちうるさいよ。」
「姉さん、そんなことで、いちいち怒ってたら駄目ですよ。もっと心を開いて!」
「何言ってんだ、おまえ?」
「福之助、チャンネル変えてくんない。もう、その猿人間のニュースは聞き飽きた。」
「はい。」
福之助は、リモコンを握った。
「あれ、利かない?」
アニーは福之助を見ていた。
「どうしたの?」
「リモコンが利かない?電池が切れたのかなあ?」
アニーは、携帯電話を取り出した。
「ここに当てて、何か押してみて。」
「はい、押しました。」
「光っているわよ。赤外線は人間には見えないけど、カメラには映るの。」
「じゃあ、おかしいですねえ?」
姉さんが、福之助に言葉を放り投げた。
「じゃあ、テレビだよ。」
「そういうことになりますねえ。」
「どれ、かしてみろ。曇ってるんじゃないのか?」
姉さんは、リモコンを発光部分をティッシュで拭った。それから、リモコンを操作した。チャンネルが変わった。
「ほらな!」
「わ〜〜、映った〜!」
「何事も、基本が大切なの。」
誰かが、ドアを叩いた。
「あら、誰かしら?」
「わたしが出ます!」と言って、福之助がドアを開けた。誰もいなかった。
「あれぇ〜〜?」
「どうしたの?」
「誰もいないんですよ。」
「誰もいない?」
姉さんも出てきて、ドアの外を右に左に見た。
「ほんとだ。おかしいわねえ。」
テレビでは、懐メロをやっていた。
アニーが、目を輝かせて懐かしそうに観ていた。
「ピッグの、自由に歩いて愛して、だわ!」
姉さんも目を見張った。
「わ〜〜、ショーケンだあ〜!」
福之助が質問した。
「ピッグって?」
「お前、知らないの?幻のグループサウンズ、PYG(ピッグ)!」
「へぇ〜〜、そうなんですか?」
姉さんは、音楽に合わせて歌いながら踊りだした。
すり足で紅流(くれないりゅう)の型を混ぜながら、ジルバのステップで踊りだした。ときどき「イエィ!」と奇声を発し、飛び二段蹴りや正拳突きで型を決めながら。
アニーは笑った。
「それ、ブルースリーもびっくりだわ。」
「そうですかあ〜?」

 誰かが〜 今〜 ドアを〜叩いた〜〜 ♪
  この〜 心の扉を開けろと〜 今〜優しい季節が来たんだ〜 ♪
 空は みんなの〜 愛は あなたの〜ものになるとき〜 今こそ〜 ♪
  この〜 心の鎖をほどいて〜 もう自由に歩いて愛して〜 ♪
 誰かが〜 今〜 ドアを〜叩いた〜〜 ♪

「福之助、マラカス、マラカス!」
「マラカス?そんなものありませんよ。」
「じゃあ、なんか叩くのないかい?」
「そんなものありませんよ。」
「じゃあ、おまえ、ここに座れ!」
「え〜〜〜?」
福之助は指図通りに座った。姉さんは、福之助の頭を手のひらで叩き始めた。
タンタタンタタンタンタン♪タンタタンタタンタンタン♪
「頭が空っぽだから、いい音してるね〜〜!」
「失礼なこと言わないでください!」
タンタタンタタンタンタン♪タンタタンタタンタンタン♪
「お〜〜、いい音!」
「わたしの頭は、太鼓じゃありませんよ!」
アニーが解説を始めた。
「BBKingの前座で演奏した時に、野次で演奏を止めざるを得なくなってしま ったんだよね。ショーケンは、怒って最後にマイクを蹴っ飛ばして。」
姉さんは、太鼓を止めた。
「そんなことがあったんですか?」
「音楽性の高い国内バンドを受け入れる土壌がまだできてい なかったんですよ。このバンドの出現があと十五年遅かったらと思うと残念でなりません。」
「日本には、まだロックが根付いていなかったんですねえ。」
「そう、まだまだ歌謡曲の時代でしたから。」
「そうですねえ。ピンクレディとかキャンデーズとか、幼稚ですよねえ。あれは幼稚園の音楽ですよねえ。外国人に恥ずかしいですよ。」
「葛城(かつらぎ)さんは、けっこう古いのを知っているんですねえ。」
「インターネットで、昔のを見るのが好きなんです。」
「え〜〜、そうなんですか?わたしもそうなんですよ〜。」
「趣味が合いますねえ、」
姉さんは構えた。
「シュワッチ!」
「何ですか、それ?」
「ウルトラマンのスペシューム光線!」
「あ〜、それ知ってる!」
「この曲は、ウルトラマンやガンダムでも使われたんですよ。」
「そうなんですか。」


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