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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第196回   猪券で猪レース
「人生は、あっと言う間です。この前、小学生だと思っていたのに、もうじき六十ですよ。あ〜〜あ、悲しいなあ〜。もう一度、小学生に帰りたいなあ〜。」
保土ヶ谷龍次は、自分の人生を嘆いていた。
「死は急がなくっても、すぐにやって来るんです。」
それに対する返事は無かった。
「わたしの問いかけに対するフォローは無しか、悲しいなあ〜。」
「そんなことはどうでもいよ。早く猪(いのしし)に逢いに行こう!」
「冷たいなあ〜、ショーケンさん!」
野迫川村名物の<わさび猪ハム>の看板が見えた。
「あの看板を曲がれば、野迫川村(のせがわむら)です。」
歩(あゆみ)が母に言った。
「お母さん、あれ買って行こうよ。お父さんが喜ぶわ。」
「そうね、酒のおつまみにいいわね。」
龍次も相槌を打った。
「あれ、とってもおいしいんだよね。せっかく来たんだから、僕も買って行こうっと!」
猪(いのしし)レース場は、野迫川村役場の隣にあった。龍次は龍神号を止めた。
「ここだ!」
ショーケンは目を見張った。
「お〜〜〜、けっこう来てるじゃあん、お客!」
「そうですねえ。」
百メートルの直線コースの両サイドは、見物人でいっぱいだった。
「百人は来てるなあ〜。」
「百人は来てますねえ〜。」
龍次は、駐車場の脇の駐輪場に電動四輪自転車・龍神号を止めた。
「近くに行って。見ましょう!」
コースの山側サイドは、見物用に段差が造られていた。
歩(あゆみ)が、ゴール近くの段差を指差した。
「あそこだったら、よく見えるわ!」
みんなは、そこに向かった。アナウンスが流れた。
『間もなく、次のレースが始まりま〜〜す!』
歩(あゆみ)が母に向かって手招きした。
「お母さん、こっちこっち、早く!」
みんなが到着すると、ほぼ同時にゲートが開いてレースが始まった。六頭の猪(いのしし)が文字通り猪突猛進(しょとつもうしん)に飛び出した。
ショーケンは驚いた。
「お〜〜、凄げ〜ぇ!」
そのまま、猪たちは、物凄い勢いでゴールした。
歩(あゆみ)も手を上げて喜んだ。
「すごいわ〜〜〜!」
母親も、口を開け目を丸くしていた。
龍次も、レースを見るのは初めてだった。
「こっれは、凄いなあ〜!」
ゴールの写真が大きな画面に映し出され、アナウンスが流れた。
『一位黄色の三番、二位赤色の一番です。』
猪券(いのけん)を購入した者は、商品交換所に急いだ。
ショーケンは走り終わった猪たちを見ていた。
「う〜〜〜ん、ここのは伊豆で見たのより凄いや!」
歩(あゆみ)も走り終わった猪たちを見ていた。
「伊豆のは、どういうのだったんですか?」
「もっと小さな猪でねえ、円形の短いコースを一周するんだけど、こんなに迫力はなかったなあ〜。」
「猪って、やっぱり早いなあ〜。」
二人の話を聞いていた龍次が語りだした。
「猪は、全速で走ると時速約四十五キロメートルの速さなんです。百二十センチの高さのバーを助走なしに跳び越えることもできるんですよ。」
歩(あゆみ)の母は、感心したように聞いていた。
「保土ヶ谷さんは、猪(いのしし)にも詳しいんですねえ。」
「入口に書いてあったんですよ。」
「なあんだ。」
アナウンスが流れた。
『次のレースは、十五分後に始まります。猪券(いのけん)の欲しい方は二分前までに購入してください。』
龍次が、にこにこしながら促した。
「僕らも、買いましょう!」
クールなショーケンも、少し熱くなっていた。
「確か、馬連…、じゃなくって、猪連(いのれん)でも買えるんじゃない?伊豆では買えたよ。」
龍次は、大人気なく、子供のようにはしゃいでいた。
「買えます、買えます。書いてありました!じゃあ買いに行きましょう!」
歩(あゆみ)も楽しそうだった。
「さわび猪ハムが、商品にあるといいんだけどなあ〜。」
母親の順子も楽しそうだった。
「そうねえ、あるといいわねえ〜!」
龍次は、子供のようにはしゃいでいた。
「あります、あります。きっとあります!」



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