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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第195回   さすらいの風男
テレビで、猿人間キーキーのニュースをやっていた。
『今朝、コンビニに買い物に来ていた女性が、猿人間キーキーと口論になり、鼻を噛みつかれました。』
人間村の集会所で、忍とポンポコリンは、お茶を飲みながらテレビを観ていた。
「さっき、高野山でも、猿人間キーキーのアナウンスが流れていたなあ。」
「そうだね。気持ち悪い世の中ねえ〜。」
「どうなってんのかなあ、いったい?」
「何が起きているんでしょうね?」
集会所の前に、モーター音が聞こえてきて止まり、スライダーカートが止まった。鶴丸隼人が入ってきた。
「カートが食堂の前に置いてあったよ。保土ヶ谷さん、いる?」
忍が答えた。
「保土ヶ谷さんだったら、ショーケンさんなんかと一緒に、野迫川村(のせがわむら)に電動四輪自転車で行ったよ。」
「野迫川村(のせがわむら)まで?ショーケンさんと誰なの?」
「よく分からない。」
ポンポコリンが答えた。
「ショーケンさんのファンとか言ってたわ。」
「ああ、そう?大丈夫かなあ〜?」
「すぐに戻るから、心配するなって言ってました。大丈夫ですよ、野迫川村くらいまでだったら。」
「そうかなあ…」
「頭脳警察は、あんなところまでは来ないわよ。」
「それならいいけど。最近、猿狩り小次郎が、けっこう飛んでるからなあ。昨夜も近くまで飛んで来たし。」
「気になるんだったら、電話をしたらどうですか?」
「そうだなあ…」
隼人は、携帯電話を取り出した。電話をかけた。
「あっ、もしもし、保土ヶ谷さん…」
『………』
「ああ、そうですか。分かりました。あっ、保土ヶ谷さん、人間村に入りたいという若い男性が来ているんですけど、どうしましょう?」
『………』
「分かりました。」
隼人は電話を切った。ポンポコリンが尋ねた。
「どうでした?」
「すぐに戻るから、心配するなって。」
「やっぱり。」
「急に出掛けたの?」
「はい。」
「あの用心深い保土ヶ谷さんが、唐突に出掛けるなんて、よほどのことがあったんだなあ。」
「あの方、意外と情で動くときがありますよ。いきなり、唐突に。」
「うん、そうだなあ…、だから心配なんだよ。」
忍は窓の外を見ていた。カートの助手席に見知らぬ男が座っていた。
「人間村に入りたいって、あの人?」
「そう。ヨコタンの名刺を持ってたよ。」
「ヨコタンの名刺を?」
「来る途中に逢ったらしいよ。」
テレビでは、新赤軍のメンバー逮捕のニュースをやっていた。
『今日午前八時頃、大菩薩峠近くで新赤軍のメンバーが破壊活動防止法で逮捕されました…』
鶴丸隼人は、眉間を寄せた。
「やっぱ、俺行ってくるよ。」
心配そうに、ポンポコリンが尋ねた。
「野迫川村(のせがわむら)にですか?」
「ああ、忍くんのオフロードのオートバイ貸してくれない?」
忍も心配そうだった。
「ほんとうに行くんですか?」
「ああ。」
「いいですよ。キイは、そこにかかってます。武器は持っていかないんですか?」
「武器?そんなものは人間村にはないよ。」
「えっ、そうなんですか?」
「人間村には、そんな物騒(ぶっそう)なものはないよ。」
「ああ、そうだったんですか。」
「外の若者、頼むよ。ここに入れて待たせておいてよ。」
「分かりました。」
さすらいの風男・鶴丸隼人は、颯爽(さっそう)とヘルメットを被って出て行った。
忍は窓から見送った。
「さすが、ニート特攻隊の隊長だ!」


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