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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第191回   奇妙なウサギ
テレビでは、猿人間キーキーのニュースをやっていた。
『今朝、コンビニに買い物に来ていた女性が、猿人間キーキーと口論になり鼻を噛みつかれました。』
アニーはテーブルに座って、レモンティーを飲みながら、黙ってニュースを見ていた。対面には福之助が座っていた。きょん姉さんは、福之助の隣に座って、緑茶を飲んでいた。
「鼻を噛むなんて、人間のやることじゃないねえ。恐ろしい。」
「恐ろしいですねえ。」
「留守の間、何か変わったことはあったかい?」
「さっき、昨日のトマト売りの少女がやってきました。」
「それで?」
「お姉さんに、ありがとうございました。と伝えておいてくださいと言っていました。」
「ああ、昨日のことだね。」
「はい、そうです。」
「来る途中に会ったよ。」
「そうですか。」
「子供なのに、しっかりしてるね。感心しちゃったよ。」
「はい。」
「あんたもしっかりしなよ。」
「しっかりしてますよ!」
「ごめん、ごめん!」
「帰りが早かったですね。」
「あんたのことが気になってね。」
「わたしは大丈夫ですよ。」
「そうみたいだね。安心したよ。」
「ところで、あけみさんは、何時(いつ)来るんですか?」
さっき、来る必要がなくなったって、電話があったよ。」
「なあんだ、そうなんですか。」
「なんか、残念そうだね?」
「いえ、別に。」
福之助は、窓の外を見た。
「あっ、ウサギだ!」
「ほんと!?」
姉さんも窓の外を見た。
「あっ、ほんとだ!」
ログハウス区域の端の方で、2匹の白いウサギが跳ねていた。
姉さんは立ち上がって、窓辺に歩み寄った。
「わ〜〜、可愛い!」
近くを人が歩いていたが、ウサギは逃げようともしなかった。
「あのウサギ、人に慣れてるねえ。」
福之助も見に来た。
観光客風の数人が、ウサギに何かを食べさせていた。
「そうですねえ。」
姉さんは首をひねった。
「でも、妙だねえ?」
アニーも立ち上がって見に来た。
「どうかしたんですか?」
「ウサギって、あんなに人に馴れることってあるんですか?」
「野生ではなくって、飼育されてるウサギじゃないんですか?」
「そうかも知れませんねえ。」
「でも、飼育小屋とか見たことも聞いたこともないなあ。」
「そうなんですか?」
「もし、野生でああいうふうに馴れてるとしたら、ちょっと不思議な光景ですねえ。」
「初めて見ました。」
「わたしも始めて見ました。」
「そういえば、さっきの小鳥といい、昨夜のタヌキといい、高野山の動物はやたらと人に馴れていますねえ。不気味なくらいに。」
「そうですねえ…」
「もしかして、高野山の結界のせいかしら?」
「結界ですか…、そんなことはないと思いますよ。」
「弘法大師の魂が、そうさせてるとか。」
「そういうこともないと思いますよ。」
「なにか、操作でもされているんじゃないでしょうかねえ?」
「操作って?」
「遺伝子操作、とか。」
「遺伝子操作…、遺伝子組み換えのことですか?」
「はい、おとなしいように改造されているんじゃないかと。」
「なるほどぉ…」
「もしかしたら、サイボーグとかクローンのウサギとか?」
「サイボーグ、クローンのウサギ!?」
2匹のウサギは、人の後を追って、おもちゃのように跳ねていた。





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