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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第190回   蜂退治の紋次郎
アニーは腕を組んで考え込んでいた。
「でも、これ大人用だから、真由美ちゃんには無理ねえ。」
まさとが提案した。
「真由美は小さくて軽いので、真ん中に座らせて二人で乗ります。」
「う〜ん、それはいいわね。グッドアイデア!」
「真由美、ここに座ってみろ!」
「うん!」
真由美は、中央の膨らんでるところに座った。
「ちょうどいいわ!」
「お〜〜〜、いいねえ!」
アニーも、よく見てから納得した。
「うん、これなら安全だわ。」
姉さんが気遣(きづか)った。
「少し練習してから行ったほうがいいんじゃない?」
アニーも同意見だった。
「そうですね。そのほうがいいわね。」
まさとと真由美は、練習を始めた。
アニーが二人に声かけた。
「わたしたち、お昼までログハウスで休憩するから、適当に出発していいわよ!」
まさとが答えた。
「はい!」
「わたしたちも、後で行くかも知れないけど、分からないから、終わったら、セグウェイの鍵をポストに入れておいてね!」
「はい、分かりました!」
アニーと姉さんが、ログハウスに入った後、二人は五分ほど練習してから、スキー場の方に向かった。
真由美は、はしゃいでいた。
「ぅわ〜〜〜、これ楽しいわぁ〜!」
「いいなあ〜、これ!」
転軸山公園の入口には駐車場があり、セグウェイも置かれていた。
「あそこのより、綺麗でかっこいいねえ〜!」
「そうだなあ。」
二人の外国人が通りかかり、二人に「グッ・モーニン!」と言ったので、まさとも「グッ・モーニング!」と言った。真由美は、「ニイザオ!」と言い返した。外国人は、きょとんとして彼女を見ていた。
模型ボブスレーのコースは、転軸山(てんじくさん)スキー場の、天文台のある左側に造られていた。
「お兄ちゃん、これだと楽だねえ。」
「そうだなあ〜。」
空はファインに晴れていた。爽やかな針葉樹の香りの空気がゆっくりと流れていた。
粗末な白い旗を握った、真由美より少し年上くらいの女の子が、木のベンチに座っていた。ぼんやりと、目の前の風を見ていた。時々、『富子、生きてる!』と呟(つぶや)きながら。だが、その微(かす)かな声は誰にも聞こえてはいなかった。ベンチを這っている蟻くらいのものだった。
二人は、その少女の前を通り過ぎた。
「お兄ちゃん、何だろう?」
「何だろうなあ?」
真由美は振り返ったが、お兄ちゃんの脚が邪魔して見えなかった。
「新しい遊びかなあ?」
「そうかも知れないなあ。」
二人は、一気に模型ボブスレーのスタート位置まで登った。
「ぅわ〜〜〜、たくさん来てるわ〜!」
「そうだなあ。」
色取り取りの模型ボブスレーを持った人たちが並んでいた。
二人は、セグウェイを降りた。まさとは、鍵を抜いた。
「さあ、見に行くぞ!」
まさとは、妹の手を握ると歩き出した。
模型ボブスレーのコースは、百メートルの距離に、曲がりくねって作られていた。
「お兄ちゃん、上から見ても面白くないわ。下から見ましょうよ。」
「そうだな、やっぱり。」
二人は、再度セグウェイに乗ると、同じ道を下り始めた。
同じベンチには、もう白い旗を握った少女はいなかった。
前方から、見たことのあるロボットがやってきた。
「お兄ちゃん、紋ちゃんだ!」
「あっ、ほんとだ!?」
ロボットの紋次郎の隣には、白色のロボットがいて、彼らの前には二人の人間が先導するように歩いていた。
紋次郎も、二人に気がついた。紋次郎が叫んだ。
「真由美ちゃ〜〜〜ん!」
手には、大きな掃除機みたいなものを持っていた。
二人は、紋次郎の前で止まった。
「紋ちゃん、何してるの?脚は良くなったの?」
二人は、紋次郎の左足を見ていた。紋次郎は答えた。
「この人たちが直してくれたんだよ。もう歩けるよ。これから、蜂退治に行くんだよ。」
「はちたいじ?」
「オオスズメバチを退治に行くんだよ。」
「どこまで行くの?」
転軸山頂上の弥勒菩薩(みろくぼさつ)の祠(ほこら)まで行くんだよ。
敵を察したかのように、一匹のオオスズメバチが飛んできた。
一番前の男が言った。
「あっ、オオスズメバチだ!」



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