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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第187回   かっこいい〜〜!
高野山の拡声器からアナウンスが流れていた。
『猿人間キーキーは、無事に確保されました。高野山に平安が戻ってきました。皆さん安心して生活してください。』
「お兄ちゃん、猿人間キーキーがどうしたの?」
「捕まったんだよ。」
「それは良かったわ〜〜。」
「変な人とは話すなよ。」
「変な人って?」
「挨拶しても、黙ってる人とか。ありがとうも言えない人とか。」
「うん、分かった!」
「キーキーは、すぐに噛みつくからな。」
「わぁ〜〜、怖い!」
まさとは、パソコンでトマトの新しい栽培法のページを見ていた。
「真由美、模型ボブスレーでも見に行くか?」
「わ〜〜、行こう、行こう!」
二人は、母親に告げると、仲良く手を繋いで家を出た。
「お兄ちゃん。」
「なんだよ?」
「ログハウスのかっこいい〜ぃ、お姉さんに御礼を言いたいの。」
「ああいいよ。どこのハウスだい?」
「いちばん手前のハウス。」
「とっても早かったの、びゅ〜〜って飛んできたのよ。そして、私を起こして、びゅ〜〜〜って帰ったの。」
「そうか、それは見てみたかったなあ〜。」
「まるで、忍者みたいに早かったわ。」
転軸山森林公園には、大人六名がゆっくり泊まれるログハウスが六棟あった。
二人は、最初のログハウスの前で止まった。
「ここだな?」
「そうよ。」
まさとが、ドアベルを叩いた。
奥の方から、機械の音声みたいな言葉が返ってきた。
「は〜〜い、どなたですかあ?」
真由美が返事した。
「昨日、助けてもらった者です。」
ドアが静かに開いた。ロボットが突っ立っていた。
「何の御用ですか?」
「昨日は、どうもありがとうございました。」
福之助は真由美のことを知っていた。
「あ〜〜、昨夜のトマト売りの、お嬢ちゃん!」
「はい、そうです。お姉さんに、お礼に来ました。」
「今、お姉さんは居ないんですよ。わたしが伝えておきましょう。」
「そうですか、よろしく伝えておいてください。」
「分かりました!」
真由美は、ぺこりと頭を下げた。まさとも「よろしくおねがいします!」と言って頭を下げた。
二人は、遊歩道に丁寧に植えてある花を眺めながら、転軸山(てんじくさん)のスキー場の方に向かった。
転軸山公園前のバス停で、十数人のハイキング客が南海りんかんバスから降りていた。
「日曜日だから、ハイキング客が多いなあ。」
「みんな、たのしそうねえ。」
千四メートルの摩尼山、千九メートルの楊柳山、その中で一番低い九百十五メートルの天軸山(てんじくさん)は、高野三山の最も気楽なハイキングコースになっていた。
真由美が叫んだ。
「あっ、昨日のかっこいい〜ぃ、お姉さんだわ!」
きょん姉さんも、真由美ちゃんに気づいた。手を振った。
姉さんは小走りでやってきた。アニーも小走りで姉さんを追ってやってきた。
姉さんはジーンズをはいている真由美の脚を見た。
「脚は大丈夫なの?」
「はい、もう大丈夫です。」
まさとが深く頭を下げた。
「昨日は、妹のために、どうもありがとうございました!」
「あっ、お兄さんなの?」
真由美が返事をした。
「そうでぇ〜す!」
まさとが改めて答えた。
「まさとと言います。」
「わたしの名前は、伊集院真由美で〜〜す!」
「いい名前ねえ。わたしは、葛城今日子で〜〜す。」
「いい名前ですねえ〜〜。」
まさとが真由美の頭に手を当てた。
「おまえ、真似すんなって!」
「いいのよ、いいのよ。とっても可愛いわ。」
アニーが、ひょいと出てきた。
「わたしは、アニーです。よろしくね!」
「アニーという名前なの?かっこいい〜〜!」
真由美ちゃんは、アニーをしげしげと眺めた。
「昨日の人もかっこよかったけど、今日の人もかっこいいいわ〜〜!」
アニーが尋ねた。
「昨日の人って?」
「ショーケンという人。かっこいいんだから。」
「そぉお、そんなにかっこよかったの?」
「まるで、スターみたいだったわ!」
話を断ち切るように、きょん姉さんが質問した。
「これから、どこに行くの?」
「模型ボブスレーを見に行くんです。」
「模型ボブスレー、それ面白いの?」
「とっても面白いんです。」
みんなの前を、高野山の道案内ロボットが通り過ぎて行った。



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