アニーは、ごまとうふ森下商店ののぼりを見ていた。 「ごまとうふでも食べましょうか。」 きょん姉さんは喜んだ。 「それはいいですねえ。」 姉さんは、早速に店の中に入り店員さんに尋ねた。 「ごまとうふはどこで食べられるんですか?」 「すみません。うちでは土産物として販売しているだけなんですよ。」 「なぁ〜〜んだ、がっかり!」 姉さんは小声で「ケチ!」と言いながら戻ってきた。 「売ってるだけなんですって!」 「そうなんですか。」 姉さんは、周りを見た。 「あっ、あそこにあるわ。ごまとうふ喫茶・天狗庵が。」 「ああ、しゃれててよさそうですね。」 「行きましょう!」 二人はごまとうふ喫茶・天狗庵に入った。 「うわ〜〜ぁ、ごまとうふのスィーツもあるんだ?」 「先ずは、普通のを食しましょう。」 「そうですね。」 二人は、普通のを注文した。すぐに出てきた。 「これが、ごまとうふか…」 姉さんは、食べる前にしげしげと眺めていた。初めての物を食べるときのクセだった。 「では、頂きます!」 アニーが食べる前に手を合わせていたので、姉さんも慌てて真似をして手を合わせた。 「あれっ?」 「どうしたんですか?」 「これ、豆腐じゃない。じぇんじぇん違う。超おいしい〜〜ぃ、何これ!?」 アニーは笑っていた。 「そうなんですよ。高野山のごまとうふは豆腐じゃないんですよ。だから、ひらがなで、とうふと書いてあるんですよ。」 「えっ?」 「普通の豆腐のように大豆では作ってありません。」 「えっ?」 「あまりにも豆腐のようだったので、とうふという名前になったそうです。」 「じゃあ、これは、いったい何で作ってあるんですか、とっても不思議な味だわ〜?」 「白ごまと吉野葛(よしのくず)で、深山から湧き出る岩清水で丹念に練り上げて作ってあるんですよ。」 「吉野葛(よしのくず)って、葛餅(くずもち)の葛(くず)ですよね?」 「はい、そうです。」 「道理で、餅っぽい食感だわ。」 「吉野葛(よしのくず)は、おいしことで有名なんですよ。」 「そうなんですか。ところで、葛(くず)って何なんですか?」 「豆科の植物です。」 「植物かぁ…」 「その植物が、お餅になるんですか?」 「お餅になるのは、葛(くず)の根です。」 「根?」 「根を水にさらしてアクを取ってから砕いて粉にするんです。」 「粉に?」 「葛粉(くずこ)にするんですよ。」 「あ〜〜ぁ、それを、お餅にするんですね!」 「そうです。」 「根ですか!知らなかったなぁ〜〜!」 姉さんはアニーを感心して見ていた。アニーは姉さんを微笑んで見ていた。 姉さんの携帯電話が鳴った。 「はい、葛城(かつらぎ)です!」 あけみさんからの電話だった。 「ああそうですか。分かりました!」 アニーが尋ねた。 「何かあったんですか?」 「昨日話していたアケミさんなんですけど、来なくても良くなったそうです。」 「えっ、どうしてですか?」 「ロボットの持ち主が了解したとかで。」 「ふ〜〜〜ん、そうなんですか?」 高野山の拡声器からアナウンスが流れた。 『猿人間キーキーは、無事に確保されました。高野山に平安が戻ってきました。皆さん安心して生活してください。』 姉さんは眉をひそめた。 「なんだよ〜、確保してからアナウンスするなよ〜!」 「おそらく、高野山の観光客を不愉快にさせないための配慮ですわ。」 「ガソリン猿人とか、猿人間キーキーとか、とにかく猿は嫌いだよ!」 「私も、大嫌い!」 「食べたら、いちど基地に帰りましょか?」 「もう帰るんですか?」 「なんだか、福之助が心配になってきちゃって。」 「そうですねえ。」
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