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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第183回   ロケット到着
江来(えらい)博士の妻の優子が、庭の空に向かって指差した。
「ココロ、よく上を見てなさい!」
猿人間キーキーの嫌いな柴犬のココロが、尻尾(しっぽ)を振って、庭の芝生に通じる大きな窓の近くで、紋次郎を見ていた。
芝生で跳ねていた小鳥たちが、慌てて飛び去った。ココロが上空を睨んで吠え出した。
「あなた、ロケットが来たわ!」
「おっ、そうか!」
上空から、鋭い噴射音が聞こえてきた。
ロボットたちを残して、人間たちは急いで庭に出た。
子供の背丈(せたけ)ほどのロケットが、庭の中央に機体をコントロールさせながら軟着陸した。
博士は手を叩いて喜んだ。
「お見事、お見事!さすが、源内先生のロケットだ!」
ロケットは、中央のシャッターを開け、荷物をポンッと吐き出すと、再び噴射をはじめた。大きな発射音を残して上空に戻って行った。
博士は、それを科学者の目で見ていた。
「お〜〜〜〜〜、ワンダフル!」
みんなは駆け寄った。
博士が荷物を拾い上げた。
「よ〜〜し、これで紋次郎くんが直るぞ!」
みんなは戻ってきた。
「心根(こころね)くん、早速つけてやってくれ。」
「はい!」
心根の優しい手先の器用な女性にもてもての心根(こころね)くんは、得意のキラースマイルで少女漫画のように瞳からキラキラ星を放ちながら、早速作業に取り掛かった。
「紋次郎くん、俯(うつむ)けになってくんない?」
紋次郎は目を見開いた。ちょっと悲しい表情になっていた。
「ちょっと待ってください!」
「どうしたの?」
「わたし、お金が無いんです。お金払えません!」
江来(えらい)博士が出てきた。
「いいんだよ、紋次郎君。お金は、要らないと思ってたんだけど、君の所長が払ってくれるって。」
「所長?」
「君、思いやりヒューマン研究所のロボットだろう?」
「はい。」
「そこの所長が、今電話で話してた、浦賀源内さんなんだよ。」
「え〜〜〜、そうだったんですか!」
「所長に手間賃は要らないって言っておいたよ。彼は長年の親友だから。」
「え〜〜、そうなんですか。」
「わたしも、あんたが気に入ってるから無料で直してあげるよ。」
紋次郎は深く深く腰の間接がきしむほどに、深く頭を下げた。
「この御恩は、一生忘れません!」
腰の間接が、ギギっと鳴った。
「君は実に人間らしいなあ。ますます気に入った!」
紋次郎は、なかなか身体を起こそうとはしなかった。
「そんな姿勢じゃあ、腰の間接が痛むから止めなさい!」
紋次郎は「はい!」と言って身体を起こした。それから、紋次郎は黙って俯(うつぶ)せになった。
荷物の中には、パーツが二つ入っていた。
技術者の心根くんは、作業が早かった。
「はい、左足交換完了!」
続いて、紋次郎の右足の踵の同じところの部品の交換をはじめた。
紋次郎はびっくりした。
「そっちはいいんですよ。」
「念のためだよ。金属が疲労しているからね。」
「ありがとうございます。」
江来(えらい)博士は、観察するように鋭い目線で交換場所を見ていた。
「紋次郎くん、社長に頼まれたんだよ。右足も交換してくれって。」
「そうだったんですか。ありがとうございます。」
「それに、今回送ってもらったものは、強いらしいよ。ちょっとやそっとでは折れないそうだよ。」
「ほんとうにありがとうございます!」
作業は終わった。
「よし終わった!立っていいよ。」
紋次郎は静かに立ち上がった。思わず叫んだ。
「わ〜〜〜!」
歩き出した。もとのように歩けた。
「わ〜〜〜、歩ける!」
博士が促した。
「庭に出て走ってごらん。」
紋次郎は庭に出た。そして走り出した。
「わ〜〜〜、走れる!」
庭を、ぐるぐりぐるぐると走り出した。柴犬のココロが尻尾(しっぽ)を振って、ワンワンと吼えながら庭を走り回りだした。まるで、人間のココロを表現するように跳ねていた。


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