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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第182回   ハンプティ・ダンプティの家
高野山の拡声器からアナウンスが流れた。
『猿人間キーキーは、無事に確保されました。高野山に平安が戻ってきました。皆さん安心して生活してください。』
ロボットの紋次郎は、風来坊仙人と一緒に、たまご型の家に向かっていた。
仙人は微笑んだ。
「あ〜〜、良かった!」
「猿人間キーキーのことですか?」
「ああ、そうだよ。」
「ほんとうに嫌いなんですね。」
「誰も好きなやつなんていなんいよ。ああ〜〜〜気持ち悪い!」
「そうなんですか…」
「もう、その話題、止め!」
たまご型の家は、瞑想していたところから、約二百メートルのところにあった。
「ここが、我が家だよ。」
たまご型の家には、鏡の国のアリスのようにハンプティ・ダンプティの顔が描かれてあった。目玉が窓になっていた。
家の周りには低木の垣根があり、芝生の庭があった。
ロボットが出てきた。
「お帰りなさいませ。」
ロボットは、家に似合った、人の背丈ほどの木のメルヘンチックな片開きの門を開けた。
「何もなかったかな?」
「はい!」
「仲間のロボットを連れてきたぞ。」
「後ろの方ですか?」
「紋次郎くんだ。」
紋次郎は頭を下げて挨拶した。
「はじめまして、紋次郎と言います。よろしくおねがいします。」
「わたしは、慈悲丸(じひまる)と言います。よろしく。」
慈悲丸(じひまる)も、ぺこりと頭を下げた。背格好は、紋次郎と同じていどだった。
松葉杖を見た後、紋次郎の足を見ていた。
「足は、どうされたんですか?」
「転んだんですよ。」
仙人が慈悲丸(じひまる)の足を見た。
「ひょっとしたら、おまえの部品で間に合うんじゃないか?」
「そうですね…」
「部品あったかな?紋次郎くん、足のどこなの?」
紋次郎は直ぐに答えた。
「踵(かかと)の部分です。」
みんなは、家の中に入って行った。
女の人が出てきた。
「心根(こころね)くんはいる?」
「はい。納屋(なや)にいます。」
「呼んできて。」
「はい。」
その女性は出て行った。すぐに、彼と一緒に戻ってきた。
紋次郎に紹介した。
「技術者の心根(こころね)くんだよ。こっちは、私の妻の優子(ゆうこ)。」
紋次郎は、頭を下げて挨拶した。
「はじめまして。紋次郎ともうします。」
二人もぺこりと頭を下げて挨拶した。
心根くんが、紋次郎の松葉杖を見ながら尋ねた。
「どうしたの、その足?」
仙人が答えた。
「転んで傷めたらしいんだよ。ちょっと診てやってくんない。」
「分かりました。」
彼は、ダイニングルームから椅子を持ってきた。
「ここに座って。」
紋次郎は「ありがとうございます。」と言って座った。
「どれどれ…、左足の踵(かかと)だね。」
「はい、そうです。」
彼は、ロボットの慈悲丸に命じた。
「慈悲丸、彼の前に上向きに寝てくんない。」
すぐに従った。
「こうですか?」
「ああ、いいよ。紋次郎くん、彼の胸に左足を乗せて。」
紋次郎は躊躇(ちゅうちょ)した。
「いいんですか?」
「ああいいよ。」
慈悲丸も「いいですよ。」と下から言った。
紋次郎は静かに乗せた。
「慈悲丸、下から照らしてくれ。」
慈悲丸の目が光った。覗き込んだ。
「あ〜〜〜、踵(かかと)の軸が折れてるなあ〜。」
仙人が尋ねた。
「部品あるかなあ?」
「残念ながらありません。この部分は特注なんです。」
「そうか、彼のところにしかないのか…」
「博士(はかせ)、どうしましょう?」
「しょうがない、浦賀源内先生に頼むか。電話してみよう。」
彼は携帯電話を取り出した。
『もしもし、源内さん、わたし高野山の江来(えらい)です。』
話は続いた。
『ああ、それは有難い!よろしくお願いします。』
彼は電話を切った。
「すぐ送るって、ロケットで。」
紋次郎は驚いた。
「ロケット!?」
「十分くらいで届くよ。」
「え〜〜〜、そんなに早く!」
みんなは平然としていた。
「来るまで、お茶でも飲んで待っていようか。」
「そうだ、あなた。カナちゃんが無花果(いちじく)大福を売ってたので買ってきました。」
「お〜〜〜、それはいい。あの子は偉いなあ〜。」


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