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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第18回   人間村
姉さんは、自動車(クルマ)の中から福之助の様子を見ていた。
福之助が戻って来た。ドアを開け、静かに乗り込んだ。
「誰かと話してたけど、何かあったのかい?」
「夏の花火大会で、自動販売機の前で逢った人です。」
「ああ、そうなの。ふ〜〜ん。」
「行きましょう。」
「ああ。」
四輪操舵車・サイドワインダーは、滑るように路肩から、やや斜め後ろ方向にガラガラガラと言いながら離れると、獣のように素早く走り出した。
「このあたりは、精進料理を食べてるせいか、メタ坊はいないねえ。」
「メタボですか。」
「デブのメタ坊。」
「そうですね。」
「真っ直ぐでいいの?」
「三番目の信号で、左折してください。」
「三番目の信号ね。」
信号を左に曲がると、参道が左側に平行に走っていた。その奥に、お墓が沢山あった。
「お墓が多いんだねえ。」
「奥の院です。戦国大名の六割以上の墓があるそうです。」
「なんだか、空気が違うねえ。」
「結界が張られていますから。」
「なんだい、けっかいって?」
「わたしも、よく分からないんです。」
「分かんない言葉を使うなよ。」
「はい。すみません。」
うっそうとした墓地を過ぎると、公園のような墓地になっていた。
「ありゃ〜〜。ロケット型お墓だ〜!」
「新明和工業って書いてありました。」
「ロケットの会社の社長かな?」
「そうかも知れませんねえ。」
「ありゃ〜。奈良の大仏みたいなのもあるよ。」
「お墓じゃないみたいですねえ。」
「奈良の大仏、立ち上がってバンバンジー〜だな〜!」
「何ですか、それ?」
「漫画。」
「そんな漫画、あったんですか?」
「知らないの?」
「はい。」
「ありゃ〜、こんどはピラミッドだ。」
「なんでもありですね。」
「コーヒーカップもあるよ。こりゃあ、お墓じゃなくって、会社の宣伝塔だな。」
「人間の皆さんは、極楽に行きたいんですね。」
「極楽ねえ…」
「姉さんも行きたいんですか?」
「えっ、極楽?そんなのあんのかねえ?」
「姉さんも、たまには考えたほうがいいですよ。」
「何を?」
「死んでからのこと。」
「死んでからのことは、死んでから考えればいいんだよ。」
「なるほどね。」
「こりゃあ、お墓マニアが喜びそうな場所だな。」
「次の役場の前の交差点を右です。」
「オッケ〜!」
役場を右に入ると、民家が多くなり、普通の景色になってきた。針葉樹よりも広葉樹が多くあった。
「このまま行くと、転軸山森林公園(てんじくさんしんりんこうえん)です。」
転軸山(てんじくさん)森林公園には、キャンプ場、天体観測場、イベント広場、アジサイ園、遊歩道があった。
「あの、ピンクの花はなあに?」
「コスモスです。」
普段は、あまり花を見ない姉さんであった。
「バーベキューやってるよ。おいしそうだなあ。」
「お腹が空いてきたんじゃないですか?」
「そうだねえ〜。」
「あの人たち、陽気なアメリカ人っぽいですね〜。」
「そうかい?」
「たぶんね。」
「美しい緑、豊かな自然と柿の葉寿司。いいねえ〜。」
「柿の葉寿司?」
「さっき、看板に書いてあったよ。」
「相変わらず、食べ物には目が早いんですね。」
道から見える丘には、ススキの穂も涼(すず)やかな風に揺れていた。
「ここは、すっかり、秋の景色だねえ。」
「そうですねえ。人間村まで、もう少しです。」
「いよいよ、龍次達のニート革命軍の村だな!」
「はい。」



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