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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第179回   メリーゴーランド!
きょん姉さんとアニーが、大通りに向かって歩いていると、高野山内の拡声器からアナウンスが流れた。
 < 暴走車進入! 暴走車進入! 暴走車進入! > 
「暴走車進入?」
「暴走車が高野山に入って来たんだわ。」
暴走車のガソリンの爆発音が聞こえてきた。
姉さんは少しうろたえた。
「ガソリン猿人だわ!」
鋭い飛行音が通り過ぎていった。
「何、今の音?」
「ミサイルかな?」
「ミサイル!?」
「行ってみましょう!」
二人は大道りに向かって駆け出した。
大通りに出ると、五百メートルほど先で何かが起きていた。
高野山警察のパトカーが通り過ぎていった。二人は、人通りの多くなった歩道を現場に向かって急いだ。
数羽のカラスが上空で、聞きなれない奇妙な鳴き声で騒いでいた。
野次馬と逆行するように、無表情な表情の男が急ぎ足で歩いていた。その男は避けようとしないので、姉さんは慌てて身体を開いて避けた。
「おっと!」
男は黙って無表情のまま去っていった。二人は立ち止まった。
アニーも、その男を見ていた。
「変な人ねえ。」
「あっ!」
「どうしたんですか?」
歩道に折りたたまれた紙が落ちていた。姉さんは拾い上げた。
「これ、今の人が落としたのかしら?」
「何なんですか?」
姉さんは紙を広げた。詩のようなものが書いてあった。
「詩かしら?」
アニーに見せた。
「そうですねえ。」
野次馬が行進していたので、二人は再び野次馬と同じ方向に歩き出した。
「今の人、心が無いというか、心を閉ざしていたわ。」
「えっ、今通り過ぎて行った人ですか?」
「はい。」
「そんなこと分かるんですか?」
「はい、分かるんです。」
アニーは振り返った。
「小さい頃から、人の心のなかが見えるんです。」
「ふ〜〜ん、不思議ですねえ。」
「じゃあ、犯罪者なんかも一目で分かるんですか?」
「はい、分かります。」
現場にたどり着くと、大勢の人々が踊っていた。姉さんは、びっくりした。
「何かしら?」
アニーは冷静だった。

イカさん 行かさん 怒ったら〜 どこにも行かさんでぇ〜 行さんでぇ〜〜 ♪

暴走車の屋根には、大きなイカが張り付いていた。そこから奇妙な音楽は流れていた。
アニーは指差した。
「あれが飛んでいたんだわ。」
イカの後方に、ロケット噴射の黒いノズルが見えていた。
「イカのミサイルだったんんですね?」
「そうですね。噂には聞いていたんですけど、初めて見ました。
「高野山は凄いのを持ってるなあ〜。」
警察官が出てきた。
「皆さん、下がってください。」
周りの人々が下がったので、二人も下がった。踊りは終わった。
姉さんは、さっきの紙を再び開いて見た。

ブルーの空 はじける絶望
  僕らには これしかなく ただ真っ只中に突っ走るしかなく
    闇雲に ひた走るしかなく 希望のない明日を ぶっ飛ばしに行くしかなく
僕の心は どこにあるのだろう ここにはなく ここには絶望しかなく
  ただ ここには乾いた涙しかなく 泣くこともできない僕しかなく
    闇雲に叫び 闇に向かって走る 僕しかなく! メリーゴーランド!

「わたしたち、いったいどこまで行くんでしょう?」
「えっ?」
姉さんは、なぜか寂しい目で遠くを見ていた。
「人々は、いったいどこまで行くんでしょう?どこに行こうとしているでしょう?」
姉さんの、いきなりの哲学的な問いに、アニーは答えが出なかった。


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