20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第178回   イカ・ミサイル
時は容赦なく前に向かっていた。そこには今だけがあり、過去はすでに無かった。過去の光景はもう無くなっていて、人々の心のなかに記憶されているだけだった。前進する今が、人々に体当たりしていた。この体当たりを、楽と感じるか苦と感じるかが、人々それぞれに違っていた。なんと不思議なことだろう。
ヨコタンとアキラは、巨大な根本大塔(こんぽんだいとう)の前に突っ立っていた。
アキラは両手を天にあげた。
「お〜〜〜、奈良の大仏、立ち上がってバンバンジー!」
隣には、クールなクリスタル・ヨコタンがいた。
「何ですか、それ?」
「奈良の大仏、立ち上がってバンバンジーのこと?」
「はい。」
「これはねえ、バンバンジー仮面のセリフ。知らないの?」
「バンバンジー仮面?」
「昔はやったアニメだよ。知ってるでしょう?」
「いいえ。」
「おっかしいなあ?」
「どんなアニメなんですか?」
「バンバンジーを食べると、超大きくなって悪い奴をやっつけるんだよ。踏み潰して。」
「やっぱり知りませんねえ。ほんとうに流行ってたんですか?」
「バンバンジー煎餅(せんべい)とかあったじゃあん!」
「バンバンジー煎餅(せんべい)?」
「そうなの?あ〜〜、アニメなんか見なかったんでしょう〜〜、いいとこの頭のいい御嬢様だったから〜。ピンポ〜〜ン♪」
「ときどきは見てましたよ。でも、それは知らないなあ。」
「おっかしいなあ〜?日本だよねえ?」
「日本ですよ。京都ですけど。小学校三年までは、横浜にいましたけど。」
「え〜〜、そうなの?横浜のどこなの?」
「緑区です。」
「じゃあ、それからは京都なんだあ。」
「そうです。」
「おっかしなあ、じゃあ京都では映ってなかったのかなあ?」
「そうかも知れませんね。」
「うん、そういうことかもね。ピンポ〜〜ン♪」
ヨコタンは腕時計を見た。
「あっ、もうすぐ八時半だわ。もう出ましょう。」
二人は、大門に近い大通りの門から出た。
門を出ると、ミ〜〜ンミンミンと蝉の声が響いていた。アキラは驚いて近くの大きな木を見た。
「なんだ、今頃?」
「辺ですねえ。」
ヨコタンも周りの木を見た。
「あっ、あれじゃない?」
「あ〜〜、あれだ!」
「あれ、おもちゃです。」
「おもちゃ?」
「蝉のおもちゃです。」
「ふ〜〜〜ん、よくできtてるなあ。」
ウゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
突然、大門から警報が鳴り響いた。
「なんだ!?」
「何かしら?」
 暴走車進入! 暴走車進入! 暴走車進入! 
大通りを、物凄い勢いと爆音で暴走車が通り過ぎて行った。
「なあんだ、猿人間の暴走かぁ。」
大門の屋根から、イカ・ミサイルが発射された。
「なんだ!?」
「イカ・ミサイルです。」
「いかみさいる?」
ミサイルは瞬く間に暴走車に追いつき、暴走車の屋根にへばりついた。警告の音声が流れた。
『すぐに止まりなさい。五秒以内に従わない場合には、前方を塞ぎます。』
ガソリン猿人の暴走車は止まらなかった。
イカ・ミサイルから、黒い液体が暴走車のフロントガラスにふりかけられた。
暴走車は視界を失って、ガードレールに車体をこすりつけながら止まった。
高野山警察のパトカーがやってきた。近くにいた人々が集まってきた。
イカ・ミサイルから、イカさんの行かさん音頭が鳴り出した。

イカさん 行かさん 怒ったら〜 どこにも行かさんでぇ〜 行かさんでぇ〜〜 ♪

近くの住民が踊り出した。それは、いつもの光景だった。





← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 32722