「淀(よど)んだ心が、すかっと爽やかに晴れる、龍神茶はいかがですか〜〜!」 波切不動の近くでは、いろんなものが売られて賑わっていた。 「龍神茶…、どんあ味なんだろう?」 龍神茶は、大きなガラスの容器の中で、太陽光線をで温められていた。 「太陽熱で温めた、神聖な龍神茶で〜〜す。」 「ふ〜〜ん。おいしいのかなあ。」 姉さんは感想を述べながら歩いていた。アニーは前を見て歩いていた。 波切不動の前では、波切りサーフィンが売られていた。 「どんな困難も越えていく、波切りサーフィンですよ〜〜!」 弘法大師のような格好をした男だった。 台の上では、フィギアみたいな置物の、波切不動の乗ったサーフィンがあった。 「いかがですか〜〜、波切不動の置物は〜〜!」 どかどかと、日に焼けた顔の逞(たくま)しい男たちがやってきた。魚臭かった。 「その置物、いくらだい?」 「このサーフィンのですか?」 「違うよ。普通のやつだよ。」 「一番大きいやつですか?」 「そうだよ。」 「一つ、一万円です。」 「五つ、くれ。」 男は手を合わせた。 「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)、ありがとうございます!」 日に焼けた顔の逞(たくま)しい男たちも手を合わせた。 「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)!」 男たちは、一人一人が一つ一つ持って行った。 「お〜〜、重いなあ。」 男たちは、金剛峰寺の無料駐車場のほうに消えていった。 姉さんは驚いた。 「凄いなあ、五体も買って行っちゃった。」 「波切り不動は、海で働く人々の守護神なんです。」 「ああ、そうなんですか。知りませんでした。」 姉さんは、今まで知らなかったことが恥ずかしかった。 「本物の波切り不動は、どこにあるんですか?」 「お堂のなかにあるんですが、重要文化財で秘蔵なんです。」 「ひぞう?」 「年に一回見られるだけで、見られないんです。」 「年に一回ですか。」 「いつだったか忘れましたけど、六月だったかな?」 後ろにいた老人が答えた。 「六月二十八日です。」 アニーは礼を言った。 「ああ、どうもありがとうございます。」 姉さんが老人に尋ねた。 「どうして、重要文化財なんですか?」 「波切不動尊と呼ばれ、弘法大師が作ったからなんですよ。」 「弘法大師作ってことですか?」 「そうです。だから貴重で尊いものなんです。」 「それは凄いなあ。」 「なにせ、モンゴルの船を沈めた御不動尊様ですから。」 「モンゴルの船を沈めた?」 「モンゴル軍が北九州に攻め込んできたときに、御不動尊様を博多まで持って行き祈祷したんですよ。それでモンゴル軍の船は沈んだということになってます。」 「え〜〜〜、そうなんですか!?」 「実際は、どうだったか分かりませんけど。」 「そうですねえ。そういうのがあったのかも知れませんねえ。」
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