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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第175回   波切り不動
「淀(よど)んだ心が、すかっと爽やかに晴れる、龍神茶はいかがですか〜〜!」
波切不動の近くでは、いろんなものが売られて賑わっていた。
「龍神茶…、どんあ味なんだろう?」
龍神茶は、大きなガラスの容器の中で、太陽光線をで温められていた。
「太陽熱で温めた、神聖な龍神茶で〜〜す。」
「ふ〜〜ん。おいしいのかなあ。」
姉さんは感想を述べながら歩いていた。アニーは前を見て歩いていた。
波切不動の前では、波切りサーフィンが売られていた。
「どんな困難も越えていく、波切りサーフィンですよ〜〜!」
弘法大師のような格好をした男だった。
台の上では、フィギアみたいな置物の、波切不動の乗ったサーフィンがあった。
「いかがですか〜〜、波切不動の置物は〜〜!」
どかどかと、日に焼けた顔の逞(たくま)しい男たちがやってきた。魚臭かった。
「その置物、いくらだい?」
「このサーフィンのですか?」
「違うよ。普通のやつだよ。」
「一番大きいやつですか?」
「そうだよ。」
「一つ、一万円です。」
「五つ、くれ。」
男は手を合わせた。
「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)、ありがとうございます!」
日に焼けた顔の逞(たくま)しい男たちも手を合わせた。
「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)!」
男たちは、一人一人が一つ一つ持って行った。
「お〜〜、重いなあ。」
男たちは、金剛峰寺の無料駐車場のほうに消えていった。
姉さんは驚いた。
「凄いなあ、五体も買って行っちゃった。」
「波切り不動は、海で働く人々の守護神なんです。」
「ああ、そうなんですか。知りませんでした。」
姉さんは、今まで知らなかったことが恥ずかしかった。
「本物の波切り不動は、どこにあるんですか?」
「お堂のなかにあるんですが、重要文化財で秘蔵なんです。」
「ひぞう?」
「年に一回見られるだけで、見られないんです。」
「年に一回ですか。」
「いつだったか忘れましたけど、六月だったかな?」
後ろにいた老人が答えた。
「六月二十八日です。」
アニーは礼を言った。
「ああ、どうもありがとうございます。」
姉さんが老人に尋ねた。
「どうして、重要文化財なんですか?」
「波切不動尊と呼ばれ、弘法大師が作ったからなんですよ。」
「弘法大師作ってことですか?」
「そうです。だから貴重で尊いものなんです。」
「それは凄いなあ。」
「なにせ、モンゴルの船を沈めた御不動尊様ですから。」
「モンゴルの船を沈めた?」
「モンゴル軍が北九州に攻め込んできたときに、御不動尊様を博多まで持って行き祈祷したんですよ。それでモンゴル軍の船は沈んだということになってます。」
「え〜〜〜、そうなんですか!?」
「実際は、どうだったか分かりませんけど。」
「そうですねえ。そういうのがあったのかも知れませんねえ。」



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