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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第168回   人生探しに行きましょう!
時は今を叩き捨てながら、わっしょいわっしょいと祭りのように容赦なく進んでいた。そして、それに従うように風が時を叩きながら、ピーヒョロピーヒョロと大自然を歌っていた。
ニート革命軍の最高幹部の龍次は、いつもの食堂にいた。
「つまり、アクセプトが大切なのよ。」
龍次の前の仕切り越しの賄い場では。仕事の手を休めて、彼の話を聞いていた。
「アクセプト?」
ちゃんと龍次の話を聞いていた。
「愛はねえ、お互いが受け入れないと駄目なんですよ。」
「はぁ?」
「一方的な愛は、ただの妄想なんですよ。」
「ああ、そうなんですか。」
「つまり、お互いが、お互いの愛を受け入れること。すなわち、アクセプトですよ。」
「アクセプトですか。」
みっちゃんは、なんだか真剣には聞いていない様子だった。
龍次は、テーブルの前に座って、煙草をふかしているショーケンを見た。
「ねえ、ショーケンさん?」
「えっ?」
「聞いてなかったんだ?」
「聞いてたよ、ちゃんと。アクセプトでしょう。」
「そうそう、アクセプト。」
「一方的な愛は妄想でしょう。」
「そうなんですよ。」
「じゃあ、俺のも妄想かなあ。」
「えっ?」
「何でもない、何でもない。」
「何かあったの?」
「何もないよ。でも、同時に愛するって事はないわけでしょう。どっちかが、その妄想で始まるわけで。」
「そうですね。」
「つまり、一方的な愛は、迷惑なだけで駄目だってことが言いたいわけね。」
「そういうことです。」
みっちゃんは笑っていた。
「分かりました。今後は、男に騙されないように気をつけます!」
騙されたという言葉に、ショーケンは彼女を見たが、話しがややこしくなりそうなので言葉は出さなかった。
食堂のみっちゃんは忙しく働き出した。誰かが、食堂に入ってきた。
「おはようございまぁす!」「おはようございます!」
リスカの女子高生、歩(あゆみ)と、ショーケンファンの母親だった。
食堂には、龍次とショーケン以外には、賄いをやっている、みっちゃんと男二人しかいなかった。
歩(あゆみ)は、まだ左手の手首に包帯を巻いていた。ショーケンは気になって尋ねた。
「その包帯、どうしたの?」
歩(あゆみ)は微笑して答えた。
「枝を伐(き)ってるときに、間違って伐(き)っちゃったの。」
隣にいた母親が少女を睨んでいた。
「また、嘘言ってる!」
少女は黙り込んだ。
「友達に同情して、一緒に死のうとしたんですよ。」
「そんなことしたのかよ!?」
歩(あゆみ)は黙っていた。
龍次が、少し怒りながら少女に尋ねた。
「その子を止めなきゃ駄目じゃない。」
歩(あゆみ)は、俯(うつむ)いて黙っていた。
「死に急ぐことはないよ。あっと言う間に人生は終わっちゃうんだから。五十年六十年なんて、直ぐに来てしまうんだから。ねえ、お母さん?」
龍次は、母親を見た。母親は頷いた。
「はい、そうですね。あっと言う間でした。」
「だから、自分で死んだら駄目だよ!人生が面白くなかったら、何か楽しいことを探そうよ。きっと、何かがあるよ。一生懸命に探せば!」
ショーケンも深く頷いた。
「そうだよ。龍次さんの言うとおりだよ。探せば、きっといいことがあるよ。」
龍次は、少し涙ぐんでいた。
「そうだ、趣味を探しましょう。何でもいいんだよ、探せば沢山あるでしょう〜!」
ショーケンも賛成した。
「そうだよ〜、探せばあるさ〜、龍次さんと違って、まだ若いんだから、何でも出来るさ〜!」
「ショーケンさん、一言多いよ。」
「ああ、そう。」
「そうだ、今日は暇だから、わたしと一緒に人生探しに行きましょう!」
龍次の目は、悲しく光っていた。



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