時は今を叩き捨てながら、わっしょいわっしょいと祭りのように容赦なく進んでいた。そして、それに従うように風が時を叩きながら、ピーヒョロピーヒョロと大自然を歌っていた。 ニート革命軍の最高幹部の龍次は、いつもの食堂にいた。 「つまり、アクセプトが大切なのよ。」 龍次の前の仕切り越しの賄い場では。仕事の手を休めて、彼の話を聞いていた。 「アクセプト?」 ちゃんと龍次の話を聞いていた。 「愛はねえ、お互いが受け入れないと駄目なんですよ。」 「はぁ?」 「一方的な愛は、ただの妄想なんですよ。」 「ああ、そうなんですか。」 「つまり、お互いが、お互いの愛を受け入れること。すなわち、アクセプトですよ。」 「アクセプトですか。」 みっちゃんは、なんだか真剣には聞いていない様子だった。 龍次は、テーブルの前に座って、煙草をふかしているショーケンを見た。 「ねえ、ショーケンさん?」 「えっ?」 「聞いてなかったんだ?」 「聞いてたよ、ちゃんと。アクセプトでしょう。」 「そうそう、アクセプト。」 「一方的な愛は妄想でしょう。」 「そうなんですよ。」 「じゃあ、俺のも妄想かなあ。」 「えっ?」 「何でもない、何でもない。」 「何かあったの?」 「何もないよ。でも、同時に愛するって事はないわけでしょう。どっちかが、その妄想で始まるわけで。」 「そうですね。」 「つまり、一方的な愛は、迷惑なだけで駄目だってことが言いたいわけね。」 「そういうことです。」 みっちゃんは笑っていた。 「分かりました。今後は、男に騙されないように気をつけます!」 騙されたという言葉に、ショーケンは彼女を見たが、話しがややこしくなりそうなので言葉は出さなかった。 食堂のみっちゃんは忙しく働き出した。誰かが、食堂に入ってきた。 「おはようございまぁす!」「おはようございます!」 リスカの女子高生、歩(あゆみ)と、ショーケンファンの母親だった。 食堂には、龍次とショーケン以外には、賄いをやっている、みっちゃんと男二人しかいなかった。 歩(あゆみ)は、まだ左手の手首に包帯を巻いていた。ショーケンは気になって尋ねた。 「その包帯、どうしたの?」 歩(あゆみ)は微笑して答えた。 「枝を伐(き)ってるときに、間違って伐(き)っちゃったの。」 隣にいた母親が少女を睨んでいた。 「また、嘘言ってる!」 少女は黙り込んだ。 「友達に同情して、一緒に死のうとしたんですよ。」 「そんなことしたのかよ!?」 歩(あゆみ)は黙っていた。 龍次が、少し怒りながら少女に尋ねた。 「その子を止めなきゃ駄目じゃない。」 歩(あゆみ)は、俯(うつむ)いて黙っていた。 「死に急ぐことはないよ。あっと言う間に人生は終わっちゃうんだから。五十年六十年なんて、直ぐに来てしまうんだから。ねえ、お母さん?」 龍次は、母親を見た。母親は頷いた。 「はい、そうですね。あっと言う間でした。」 「だから、自分で死んだら駄目だよ!人生が面白くなかったら、何か楽しいことを探そうよ。きっと、何かがあるよ。一生懸命に探せば!」 ショーケンも深く頷いた。 「そうだよ。龍次さんの言うとおりだよ。探せば、きっといいことがあるよ。」 龍次は、少し涙ぐんでいた。 「そうだ、趣味を探しましょう。何でもいいんだよ、探せば沢山あるでしょう〜!」 ショーケンも賛成した。 「そうだよ〜、探せばあるさ〜、龍次さんと違って、まだ若いんだから、何でも出来るさ〜!」 「ショーケンさん、一言多いよ。」 「ああ、そう。」 「そうだ、今日は暇だから、わたしと一緒に人生探しに行きましょう!」 龍次の目は、悲しく光っていた。
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