20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第165回   たんぽぽコーヒー
ヨコタンを待って、ぼんやりと天軸山の上の雲を見ていると、真由美が出てきた。
お盆にコーヒーカップを載せていた。
「私が作った、たんぽぽコーヒーです。飲んでください。」
「たんぽぽコーヒー?」
真由美は、にこっと笑った。
アキラは黙って一口飲んだ。
「これおいしいなあ〜、これタンポポで作ったの?」
「はい。」
「あの、黄色い花のタンポポで?」
「はい。」
「本物のコーヒーみたいだねえ〜、おっどろき〜!どうやって作るの?」
「タンポポの根を洗って切って、水にしばらく入れてアク抜きをしたら、一週間くらい乾燥させて、フライパンで炒って作るんです。」
「簡単だねえ。」
「はい。」
「誰に教わったの?」
「お父さん。」
「ふうん…」
そんなに熱くはなかったので、アキラは一気に飲み干した。
「うん、おいしかった!」
アキラはコーヒーカップを真由美に返した。
「どうもありがとう!」
「いいえ、どういたしまして。」
学生風の若い男がやってきた。真由美ちゃんに、軽く頭を下げた。
「ニー・ザオ!」
真由美も頭を下げて挨拶した。
「ニ〜・ザオ!」
アキラにも軽く頭を下げた。「おはようございます。」
アキラも軽く頭を下げた。「おはようございます。」
通り過ぎていった。
「真由美ちゃん、何て言ったの?」
「ニ〜・ザオのこと?」
「うん、それそれ。」
「おはよう!って言ったの。中国語よ。」
「中国語かあ、真由美ちゃんは、中国語もできるんだ〜。」
「ちょっとだけね。」
「ふ〜〜ん。偉いなあ〜。」
真由美は、にこっと笑うと戻って行った。
「にいざお、ね…」
アキラは、中国語を何度も口にしながら目の前の風を見ていた。
「青い風だなあ…」
ヨコタンが出てきた。
「お待ち〜〜ぃ!」
「もう終ったの?」
「もう終ったわ。」
まさとと真由美も出てきた。まさとが深く頭を下げた。
「どうも、ありがとうございました。」
真似をするように、真由美も頭を下げた。
「どうもありがとうございました。」
ヨコタンは、まさとを見た。
「また何かあったら遠慮なく連絡して。」
「はい。」
真由美がヨコタンの顔を見た。
「わたしも早くアルバイトしたいなあ〜。」
「待っててね。」
「は〜〜い。これから、どこに行くの?」
「アキラさんと一緒に、カートに乗りに行くのよ。」
「わ〜〜ぁ、いいなあ〜。」
「今日はテストだから駄目だけど、来週からは乗れるわよ。」
「は〜〜〜い。」
ヨコタンとアキラは、大門に向かって歩き出した。
まさとの隣で、真由美が、「行ってらっしゃ〜〜い!」と叫びながら手を振っていた。
「何か見てたみたいだけど、何を見てたの?」
「…風。」
「風?アキラさんて、詩人なのね。」
「子供の頃に吹いてた、懐かしい風を感じたんだよ。変だなあ…」
「ふふん。」
「あのコーヒーのせいなのかなあ?」
「たんぽぽコーヒー?」
「そう、たんぽぽコーヒー。不思議な味の不思議なコーヒーだったなあ〜。」
「たんぽぽコーヒーは、ヨーロッパでは昔から飲まれているんですよ。」
「あ〜〜、そうなの。」
「胃腸の調子をよくしたり、頭をすっきりさせる効用があるんです。」
「じゃあやっぱり、コーヒーのせいかなあ。」
「そうかも知れませねえ。」



← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 32722