まさとは、リアカーに真由美ちゃんを乗せて、家に向かっていた。その後方を、ヨコタンとアキラが歩いていた。 「高野山の米って、凄くおいしいねえ。あんなおいしいの初めてだよ。ご飯が、あんなにおいしいなんて、びっくりしたよ〜。」 「農薬を使ってないの。それに、電気じゃなくって、かまどで薪(まき)で炊いてるの。」 「かまど?」 「かまど、知らないの?」 「どんなんだっけ?」 「鍋や釜をかけ、下から火をたいて煮たきするものよ。見たこと無いの?」 「あ〜〜〜、あるあるある!テレビで見た。」 「俺ってさあ〜、馬鹿なんだけどさ〜、なんとなく分かってきたよ〜。」 「えっ、何が?」 「ここの人達の考えというか、保土ヶ谷龍次の考えが。」 「えっ?」 「一人はみんなの為に、みんなは一人の為に。ってあるじゃん。あれだな。」 「あ〜〜、そうかもね。」 「ピンポ〜〜〜ン!」 「アキラさんって、馬鹿じゃないわよ。そんなことに気付くんだもの。それに、ほんとうに馬鹿な人は、自分で自分のことを馬鹿とは絶対に言わないわ。逆に馬鹿さを隠そうとして利口ぶるわ。」 「そ〜〜お。」 「論理的でない人に限って、論理を口にするの。思いやりのない人に限って、思いやりを口にするの。」 「そうなんだ。」 「きっと、エジソンみたいに右脳が優れているのよ。」 「エジソンと同じ、俺が?」 「エジソンは、歴史とか暗記するものが、まったく駄目だったらしいわよ。」 「へ〜〜〜ぇ。」 「本人に言わせると、根拠のないものは覚えられないとかだったらしいけど。」 「そ〜りゃあ、そうだなあ。実際に見たわけじゃないしな〜。さすがエジソン!賛成!」 「アキラさんもそうだったの?」 「まあ、そうかもね。証拠があんのかよ〜〜って感じだったね。」 「ふふふ、やっぱり。」 「やっぱりって?」 「不良って、みんなそういう感じね。」 「俺、不良じゃないよ!」 「ごめん、ごめん!」 「いいよ。少しは不良だっかから。で?」 「不良の子は、親が不良の場合が多いの。」 「そうかもな…」 「で、そういう子は、親に対して拒否するようになるの。」 「拒否?」 「小さい頃から、親の言うことを信じなくなるの。」 「なるほどぉ。」 「それで、親や権威に対して、素直に覚えようとしなくなるのよ。無意識にね。」 「それ、言えてるかもね。」 「で、思考が想像力に行っちゃうわけ。」 「分かった!自分の世界を勝手に作っちゃうわけね。」 「そういうこと。」 「さ〜〜すがインテリ!いままでの自分のことが、良く分かったよ〜!」 アキラは感心して、ヨコタンの顔を見た。 「あんたはいいよな〜〜。」 「えっ、何が?」 「美人だし、頭はいいし。」 「でも、みんがいるから私があるのよ。だから、みんなに感謝してるの。」 「え〜〜、どういうこと?」 「私が一人で頑張っても駄目だってこと。人は、みんなのなかで育つのよ。」 「どんな天才も?」 「そう、一人では天才にはなれないわ。親とか先生とか友人とか、周りの人々がいて育つのよ。」 「なるほどねえ。」 「アキラさんは、勉強よりも遊ぶのが好きだったのかな?」 「まあね。」 「それも才能だわ。」 「そうかなあ?」 「だって、親が遊びを教えたんじゃないんでしょう?」 「勿論だよ。自分で考えて遊ぶんだよ。」 「遊ぶには、柔軟な心と知恵が必要だわ。他人に対する思いやりもね。」 「なぁるほどねぇ。」 「柔軟な心は、遊びから育つの。」 「なあるほどねぇ。」 「だから、小さい頃に他人と遊んでないインテリは、感情の鈍い人が多いのよ。」 「あ〜〜、大人で自己中心の子供みたいな奴ね。」 「それに、人間は遊び心がないと病気になるわ。うつ病とか。」 「俺は、勉強なんかしないで、外で遊んでばっかいたからなあ〜。テレビもよく観てたけど。」 「テレビだって、いろんなことを教えてくれたでしょう?」 「まあ、そうだなあ。」 「だから、人間はどんなに頑張っても一人では生きていけないの。」 「な〜〜るほどね。さっすが、やっぱりあんたはインテリだなあ〜!言うことが決まってるよ〜!」 「私は、インテリなんかじゃないわよ。」 「インテリだよ。今まで逢ったなかで最高のインテリだよ〜〜!」 アキラは、笑顔でヨコタンを見た。ヨコタンは、アキラに微笑を返した。 「あっ、着いたわ。」 まさとは、伊集院と書いてある家の前でリアカーを止めた。真由美を降ろした。真由美は家のなかに入って行った。 「ただいま〜〜!」 まさとは、リアカーを家の脇に止めると、プリンターを持って家のなかに入って行った。 「アキラさん、ちょっと待ってて。」 「あいよ。どのくらい?」 「すぐに終わるわ。五分くらいかな?」 「あいよ、分かった!」 ヨコタンも、家のなかに入って行った。
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