20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第163回   時は金なり
「まさと君は、熱心ねえ。プリンター、何に使うの?」
「いろいろと資料を集めたいんです。」
「資料?」
「新しい栽培技術とか、工場野菜とか、そういうものを。」
「ああ、テクノロジー野菜栽培ね。」
「そうです。」
「今は、季節や場所に関係なく作れるようになったわ。そういうもの?」
「そうです。」
「まだ、企業秘密が多いよ。」
「そうですね。」
「これから、農業大学とか行ったらいいんじゃないかしら?」
「行くつもりです。」
「そうだ。わたしたちもやってみようかなあ。この前、高野山テクノロジー研究所の人達も、そういうことを言ってたわ。まさと君も参加しない?」
「えっ、いいんですか、僕でも?」
「いいの、気持ちがあれば、誰でも。」
ヨコタンは、まさとの隣に立ってる真由美の頭を、しなやかな右手で撫でた。
「真由美ちゃんでもいいのよ。」
真由美は喜んだ。
「わたしでもいいの〜〜〜!」
「いいのよ。」
「わ〜〜〜、やってみたいなあ〜!」
「何をやってみたいのかなあ?」
「四角のおいしいトマトを作りたいの。」
「四角?」
「だって、だって、四角だったら転がらないでしょう。黄色いトマトも作りたいなあ〜。」
「それは面白そうねえ。」
アキラは、三人の会話を感心したように黙って聞いていた。
「アキラさんも、どう?」
「俺?俺はそんなの無理だよ。機械なら得意だけど。野菜とかは、さっぱり分かんないし。あんまし食べないしな〜。」
真由美ちゃんが得意げに言った。
「野菜を食べないと、病気になって頭が悪くなるんだから。」
「ああ、そうなの?」
「そうなのよ〜。食べなきゃ駄目よ〜!」
「だから俺、頭が悪いんだ!分かった!ちゃんと明日から食べよう!」
「きっと、もう転ばなくなるわ。」
「あ〜〜、はっはは!」
ヨコタンが、みんなを促(うなが)した。
「さあ、行きましょう!」
まさとはプリンターを持っていた。目が輝いていた。
「これで、いろんな新しい情報を印刷できるぞ!」
「まさと君は、きっと素晴らしい経営者になれるわ。」
真由美が質問した。
「経営者って、なあに?」
「社長さんよ。いろいろと考える偉い人。」
「ぅわ〜〜、かっこいい〜!」
「高野山から認可されたら、真由美ちゃんにも、ちゃんとアルバイト料を払うわよ。」
「ぅわ〜〜〜、ほんとぉ!?」
「ほんとよ。」
真由美は両手を上げて踊り出した。
「わ〜〜い、わ〜〜〜い!」
アキラも嬉しくなって、マイケルの後ろ歩きのバックステップで踊り出した。
「おっ、この場所なら大丈夫だ!」
真由美ちゃんは驚いた。
「ぅわ〜〜〜、何それ〜〜!?」
「面白いだろう!?」
「おもしろ〜〜〜い!」
真由美は、手を叩いて喜んだ。
「さっきは、それをやりたかったのね。」
「そうなんだよ〜〜〜!」
道に出ると、青い繋ぎ服を男が、『時は金なり、時給を上げろ!』の看板をを持って歩いていた。アキラは不思議そうに、それを見ていた。
「何、あれ?」
ヨコタンが答えた。
「時は金なり教です。」
「時は金なり教?」
男は歌っていた。
「時は金なり〜〜、ぼやぼやしてたら〜、あの世行き〜〜ぃ♪」
ここ高野山でも、時だけがとめどなく流れていた。山雀(やまがら)が忙(せわ)しなく時を泳いでいた。
まさとは、リアカーにプリンターを載せた。
「真由美、おまえも乗れ。」
「うん。」
まさとがリアカーの後部を下げると、真由美は楽しそうに乗り込んだ。



← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 32722