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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第162回   爽やかな風が吹いていた
人間村の食堂に、龍次たちが来たとき、入口の近くのテーブルでヨコタンとアキラが座って、食事をしていた。龍次は、ヨコタンに軽く手を振った。ヨコタンも軽く手を振った。アキラは、龍次の後ろを歩いていたショーケンに気がついた。
「よっ、兄貴!」
「お前、早いなあ。」
「兄貴、これから?」
「ああ、そうだよ。」
「こっちに座んなよ。」
アキラの右隣が空いていた。ショーケンは軽く頷くと、そこに座った。食堂には、三十人ほど入っていた。
龍次は、食堂の賄(まかな)い場の女性を呼んだ。
「みっちゃん。栗ご飯、用意できてる?」
「はい、できてます。」
彼女は、いそいそと、栗ご飯の入っている折り詰めを三つ差し出した。
「はい。」
「ありがとう!」
龍次は、食堂から出ると、外で待っていた真由美とまさとに渡した。
「はい。栗ご飯が入ってるよ。」
真由美は、にこにこしながら折り詰めを見ていた。
「これ、いただいてもいいのかしら?」
「もちろんだよ。」
まさとは、頭を下げて受け取った。
「真由美、栗ご飯が好きなんです。ありがとうございます。」
「それは良かった。お母さんにもよろしくね。」
「はい。」「は〜〜い!」
真由美が兄のまさとを下から見上げた。
「あっ、そうだ。お兄ちゃん。保土ヶ谷さんに用があったんじゃないの?」
龍次は、それを聞いていた。
「なんだね、まさとくん?」
「あの〜ぅ、プリンターありませんか?動けば何でもいいんですけど。」
「ああ、あるよ。集会所にあるから持って行っていいよ。」
「ああそうですか!じゃあ遠慮なく持って行きます!」
「処分しようと思ってたんだよ。でも、旧式だよ。」
「何でもいいんです。動けば。」
「私じゃ分からないから、ヨコタンを呼ぼう。」
ちょうど、ヨコタンとアキラが出てきた。龍次はヨコタンに声を掛けた。
「あっ、ヨコタン。ちょっと頼みがあるんだけど。」
「なんでしょうか?」
「集会所に古いプリンターがあったでしょう?」
「はい。」
「まだあるよね?」
「はい、あります。」
「あれを、伊集院さんの家まで持って行くんだけど、確かぁ、ソフトをインストールしないと駄目なんだよね?」
「はい。」
「悪いけど、インストールしてくれない?」
「はい、分かりました。」
真由美が、手を上げて喜んだ。
「わ〜〜〜、良かったねぇ、お兄ちゃん!」
アイラが真由美の頭を撫でた。
「可愛いなあ、名前は何ていうの?」
真由美は、びっくりした。
「お兄ちゃんは、だあれ?」
「俺…、じゃなくって、僕はね、アキラ。」
「わたしは、真由美。」
「まゆみちゃんか〜〜〜、いい名前だなあ〜〜〜!」
「ありがとうございます。」
「プリンターくらいだったら、俺が持って行ってあげるよ。」
「いいんです。お兄ちゃんが、あのリアカーで持っていくんです。」
真由美は指差した。まさとが言葉を加えた。
「大丈夫です。あれで運びますから。」
「あっ、そう。」
ヨコタンが、集会所に向かって歩き出した。
「こっちにあるわ。ついてきて。」
その後を、アキラと伊集院の兄妹は歩き出した。
「真由美ちゃんは、可愛いなあ〜!」
アキラは妙なバックステップで後ろ向きに歩き出した。
「これ、マイケル!」
そう言うと、アキラは真由美ちゃんの前で転んだ。
「あいてててて!」
真由美ちゃっは、びっくりした。
「何してるのぉ?」
「あ〜〜あ、見せてあげたかったんだけどなあ、下がでこぼこしてるから駄目だぁ!」
そう言って、アキラは立ち上がった。
針葉樹の植物フェトンの爽やかな風が吹いていた。
前を歩いてるヨコタンが、両手を挙げて大きく伸びをした。
「ああ、いい風!」
まさとはリアカーを引いていた。
「高野山の風は、頭がすっきりしますよね。」
ヨコタンが振り向いた。
「そうね。どうしてか知ってる?」
「えっ、どうしてかって?分かりません。」
「杉や高野槙(こうやまき)のテレピンは、気分をすっきりさせる効果があるの。頭痛薬にも使われているのよ。」
「そうなんですかあ。」


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