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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第158回   遊びの天才
高野山中学校は、サッカー場が三つほどの大きな芝生の広場の前にあった。中学生くらいの三人があ、大きな人間の背丈(せたけ)くらいのボールを蹴りあって遊んでいた。きょん姉さんは、何だろうという顔で、それを見ていた。
「何やってるかな?」
アニーは隣を歩いていた。
「あれですか。あれは、戦国サッカーです。」
「戦国サッカー?」
「五十人対五十人でやるサッカーです。」
「あの大きなボールでですか?」
「はい。」
「面白そうですね。」
「とっても面白いですよ。」
「やったことあるんですか?」
「はい。」
「わたしもやってみたいなあ。」
少し離れたところでは、二人でバレーボールをやっていた。妙な音を立てて、ボールが宙を舞っていた。
「あのボール、ヒュロロ〜とかピロピロ〜とか、変な音を出していますねえ。」
「サウンドボールです。」
「サウンドボール?」
「このあたりの、ポピュラーな遊び道具です。」
「関東には無いなあ〜、見たこと無いなあ〜。」
「所変われば、品変わるですかねえ。」
「そうみたいですね。」
「変化球ボールもあるんですよ。」
「自分で変化するんですか?」
「はい。ただし、どっちに曲がるかは分かりません。」
「天のみぞ知るってやつですね。」
「はい。それで占う遊びもあるんですよ。」
「ふ〜〜ん。こっちの人は、遊びの天才だなあ。」
道脇のコスモスの花が風にそよいでいた。陽射しはあるが、暑さは感じず心地良い朝だった。
前方から、車輪足の人型ロボットがやって来た。姉さんは、ロボットに挨拶した。
「おはよう〜。」
ロボットも挨拶した。
「おはようございます。」
頭は下げなかった。胸に、道案内ロボット3号と書いてあった。
「あなた、道案内ロボット?」
「はい、そうです。」
「ちょうど良かったわ。高野山テクノロジー研究所って、どこですか?」
「真っ直ぐ行って、中学校を通り過ぎて、右の建物です。ここから百二十メートルほどです。」
「どうもありがとう。」
「ご案内いたしましょうか?」
「あなた、これから仕事なんでしょう?」
「はい。」
「だったら、大丈夫よ。ありがとう。」
「どういたしまして。」
ロボットは、大通りに向かって再び動き出した。二人は、前に向かって歩き出した。
前から昨夜の男が歩いてきた。男は姉さんに気付いた。
「おはようございます。昨夜はどうも、いろいろとありがとうございました。」
姉さんは、少し気をつかいながら答えた。
「おはようございます。からくり発明神社にお参りですか?」
「はい。」
「これから、どこへ?」
「帰ります。帰って頑張ってみます。」
「あんまり頑張っても駄目ですよ。マイペースで気楽に頑張ってください。」
「はい。気楽に頑張ります。」
「お気をつけて。」
「豚や牛の死を無駄にしないで頑張ります。」
「はっ?」
「それじゃあ。」
男は、深く頭を下げると、背高ノッポのススキの穂を手で撫でながら去って行った。同じように爽やかな風がススキを撫でていた。


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