高野山中学校は、サッカー場が三つほどの大きな芝生の広場の前にあった。中学生くらいの三人があ、大きな人間の背丈(せたけ)くらいのボールを蹴りあって遊んでいた。きょん姉さんは、何だろうという顔で、それを見ていた。 「何やってるかな?」 アニーは隣を歩いていた。 「あれですか。あれは、戦国サッカーです。」 「戦国サッカー?」 「五十人対五十人でやるサッカーです。」 「あの大きなボールでですか?」 「はい。」 「面白そうですね。」 「とっても面白いですよ。」 「やったことあるんですか?」 「はい。」 「わたしもやってみたいなあ。」 少し離れたところでは、二人でバレーボールをやっていた。妙な音を立てて、ボールが宙を舞っていた。 「あのボール、ヒュロロ〜とかピロピロ〜とか、変な音を出していますねえ。」 「サウンドボールです。」 「サウンドボール?」 「このあたりの、ポピュラーな遊び道具です。」 「関東には無いなあ〜、見たこと無いなあ〜。」 「所変われば、品変わるですかねえ。」 「そうみたいですね。」 「変化球ボールもあるんですよ。」 「自分で変化するんですか?」 「はい。ただし、どっちに曲がるかは分かりません。」 「天のみぞ知るってやつですね。」 「はい。それで占う遊びもあるんですよ。」 「ふ〜〜ん。こっちの人は、遊びの天才だなあ。」 道脇のコスモスの花が風にそよいでいた。陽射しはあるが、暑さは感じず心地良い朝だった。 前方から、車輪足の人型ロボットがやって来た。姉さんは、ロボットに挨拶した。 「おはよう〜。」 ロボットも挨拶した。 「おはようございます。」 頭は下げなかった。胸に、道案内ロボット3号と書いてあった。 「あなた、道案内ロボット?」 「はい、そうです。」 「ちょうど良かったわ。高野山テクノロジー研究所って、どこですか?」 「真っ直ぐ行って、中学校を通り過ぎて、右の建物です。ここから百二十メートルほどです。」 「どうもありがとう。」 「ご案内いたしましょうか?」 「あなた、これから仕事なんでしょう?」 「はい。」 「だったら、大丈夫よ。ありがとう。」 「どういたしまして。」 ロボットは、大通りに向かって再び動き出した。二人は、前に向かって歩き出した。 前から昨夜の男が歩いてきた。男は姉さんに気付いた。 「おはようございます。昨夜はどうも、いろいろとありがとうございました。」 姉さんは、少し気をつかいながら答えた。 「おはようございます。からくり発明神社にお参りですか?」 「はい。」 「これから、どこへ?」 「帰ります。帰って頑張ってみます。」 「あんまり頑張っても駄目ですよ。マイペースで気楽に頑張ってください。」 「はい。気楽に頑張ります。」 「お気をつけて。」 「豚や牛の死を無駄にしないで頑張ります。」 「はっ?」 「それじゃあ。」 男は、深く頭を下げると、背高ノッポのススキの穂を手で撫でながら去って行った。同じように爽やかな風がススキを撫でていた。
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