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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第156回   子不幸
「やっと店員の仕事をみつけてきたら、店員の仕事のために大学を出したんじゃない!と、親にしかられけんかして出てきたって言ってたよ。」
姉さんは眉をしかめた。
「ひどい親ですねえ。」
「そういう時代錯誤の親がいるんだよね。自分たちの時代で今を判断してるんだよね。」
「今が、どういう時代か分かってないんですね。」
アニーも同情していた。
「親が高学歴の人だったら、そのくらい分かるんじゃないかしら。経済ニュースとか見てないのかしら?」
老人は悲しそうだった。
「親が馬鹿だと、子供が可哀想だ。人生は、社会を見て先を読まないと駄目なんですよ。囲碁や将棋のようにね。」
アニーは頷いた。
「つまり、いつまでも同じ社会はないってことですね。」
「そういうこと。社会が変われば、常識も変わるし生き方も変わる。」
ログハウスの前の道路を、高野山警察の白い外国製の二人乗りタンデムスクーターが走って来た。後ろの座席に座ってた男が手を振ったので、老人も手を振った。そして、彼の前で止まった。
スクーターに詳しいスクーターマニアの姉さんの目が輝いた。
「おっ、ベネリ・アディバの新型タンデムだ。」
老人が右手をあげて軽く敬礼をした。
「おはよう、署長!」
「おはようございます。萩原さん。」
「日曜も出ですか?」
「最近、日曜日になると、ひったくりが増加してましてねえ。」
「高野山にですか?」
「はい。下界からやって来るんですよ。困ったもんです。」
「高野山は、金持ちや外国人が来ますからねえ。」
「そうなんですよ〜。ミニバイクには気をつけてください。女性ばかりを狙ってますから。」
「まったく、ひどいやつらだなあ。」
「ミニバイクの音が後ろから聞こえたら、気をつけてください。」
「ああ、気をつけるよ。」
「最近は、音のしない電動バイクもありますので。」
「ああ、そうだね。気をつけよう。」
署長は、アニーと姉さんに目が行った。
「こちらの方々は?」
老人が答えた。
「隣のログハウスの方です。」
姉さんとアニーが挨拶した。
「おはようございます。」「おはようございます。」
署長も挨拶した。
「おはようございます。観光ですか?」
姉さんが答えた。
「はい。」
「ひったくりには気をつけてくださいね。」
「はい。」
署長は老人を見ながら言った。
「こんなビューティな方々が隣にいるなんて、ラッキーですなあ。」
「そうだね。女房の顔は見飽きてるから。」
「あ〜〜〜、言いつけちゃおっと!」
「言わないでよ、そんなこと!」
「冗談ですよ。今日は、午前九時から十二時ごろまで、大門から先の高野山道路が、高野山スライダーカートの試し走行のために通行止めになるんですよ。」
「ああ、そうなの。」
「来週からは、日の出から日の入りまでのカート専用走行時間帯になります。その時間は、普通の車両は通行できませんので注意してください。」
「カートだけってことね。」
「そうです。」
「夜は通行できるんだよね。」
「そうです。」
「これで、高野山道路が、ただの危険なドライブ道路にならないでいいんじゃない?」
「そうなんですよ。大半が通過するだけのクルマだけですから、困ってたんですよ。」
「これで、高野山も平和になり、観光客も増えますよ。世界遺産の高野山で交通事故じゃあね。」
「そうなんですよ。それじゃあ、また。」
署長は、三人に軽く敬礼をすると去って行った。
高野山の朝の風が好きなアニーは、爽やかな顔をしていた。
「葛城さん。福之助さんがおかしくなるのは、電圧が不安定だからかも知れないわ。高野山テクノロジー研究所に行って、バッテリーを尋ねてみましょう。」
「ああ、そうですね。」
老人が促した。
「中学校は、そこの道を真っ直ぐ行って、大きな道を右だよ。」
「中学校なら知ってます。近くで育ったものですから。」
「ああ、そうだったの。」
二人は、老人に頭を下げると、研究所に向かって歩き出した。




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