まさとは集会所の脇にリアカーを止めた。集会所の前には村人が集まっていた。真由美はリアカーに乗っていた。 「お兄ちゃん、何かやってるよ。」 「何だろうな?」 まさとは、真由美をリアカーから降ろすと、手を繋いで列の後ろに回った。 昨日のショーケンがいた。真由美ちゃんは喜んだ。 「あら、ショーケンさんだわ!」 ショーケンも気が付いた。 「おっ、真由美ちゃん。」 まさとが頭を下げて挨拶をした。 「昨日は、どうもありがとうございました!」 「ああ、大したことはないよ。俺がやったわけじゃないから。」 「真由美も母も喜んでました。歌まで歌っていただいてありがとうございました。」 「いつでも行くから、またリクエストしてよ。」 真由美ちゃんが喜んだ。 「わ〜〜〜、嬉しい〜ぃ!」 まさとが叱った。 「真由美!」 列の前では、眼鏡目をかけた一休さんが喋っていた。 「あと一人です。誰かいませんか?」 「はい!」 ショーケンの前の女性が手をあげた。 「これで五人です。前に出てきてください。研究開発チームの五人も出てきてください。」 アキラも出て行った。ショーケンは呟いた。 「物好きなやつだなあ。」 全員並んだ。その中に、クリスタル・ヨコタンもいた。 「あれ〜、彼女もいるんだ。あ〜〜、俺も行けばよかった。」 真由美ちゃんが、下からショーケンの顔を覗きこんだ。 「どうしたの?」 「うん、なんでもない。」 ヨコタンは、両サイドに南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)と刺繍してあるカーキ色の高野山ジーンズをはいていた。 「あのジーンズ、かっこいいなあ〜。」 「何がかっこいいの?」 「うん…」 ショーケンは真由美ちゃんを持ち上げた。 「昨日のおねえさんがはいているやつだよ。」 「ほんとだ〜、かっこいい〜〜。」 ショーケンは真由美ちゃんを降ろした。 「真由美ちゃん、重いなあ〜。」 「そうかしら?」 龍次が出てきた。 「残りの皆さんには、試し走行の間、高野山内の交通整理をやってもらいます。各自、食事が終わったら、高野山警察前の広場に八時に集合してください。試し走行は九時から始まります。では解散します。」 みんなは、それぞれに散って行った。 ショーケンがヨコタン達を見ながら突っ立っていると、龍次がやって来た。 「ショーケンさんは、交通整理はいいですよ。今日はゆっくりと休んでください。」 「やってもいいですよ。」 「あれだけいれば多いくらいです。大丈夫です。」 「そうですか。じゃあゆっくりと休ませていただきます。」 ヨコタンとアキラ達は、集会所に向かっていた。 真由美が龍次に挨拶した。 「保土ヶ谷さん、おはようございます。」 ペコリと頭を下げた。 「おはよ〜〜〜!」 まさとも頭をペコリと下げた。 「おはようございます。昨日はどうもありがとうございます。」 「おはよう。パソコン、ちゃんと動いてますか?」 「はい。ちゃんと動いてます。」 「それはよかった。分からないことがあったら、遠慮なく私に、じゃなくってヨコタンに尋ねてください。」 「あっ、昨日の方ですね。」 「そうです。携帯の番号知ってますか?」 「はい。名刺をもらいました。それに書いてありました。」 「ああ、そう。」 真由美が、龍次に質問した。 「保土ヶ谷さん、今の何だったの?」 「今のはねえ、今日カートに乗る人を決めてたんだよ。」 「あ〜〜、そうなの。誰でも乗れるの?」 「誰でもじゃ駄目なんだよ。試験だから、ここの村の人だけなんだよ。来週からは誰でも乗れるよ。」 「な〜んだ。」 「乗りたいの?」 「ううん、お兄ちゃんが乗りたがってたの。」 龍次が、まさとを見た。 「今日は、残念ながら関係者以外は乗れないんですよ。」 「ああ、いいんです。もし乗れたらなあ〜と思って。」 「来週の開通日に、私の乗りますので、みんなで乗りに行きましょう。」 「あの〜〜、料金はいくらなんでしょうか?」 「わたしが払います。」 「えっ?」 「いいんですよ。待ちに待った、おめでたい開通日ですからね。」 真由美が喜んだ。 「お兄ちゃん、良かったね〜〜!」 龍次が真由美の頭を撫でた。 「真由美ちゃんも一緒だよ。」 「わたしも乗れるの〜?」 「もちろんだよ。」 「わ〜〜〜、嬉しい〜〜!」 真由美は跳ねて踊り出した。 「高野山スカート、高野山スカート♪」 まさとが言った。 「高野山スカートじゃなくって、高野山カート。」 真由美は、即座に訂正した。 「高野山カート、高野山カート♪」
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