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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第151回   模型ボブスレー
きょん姉さんは、ログハウスに入る前に両手を挙げて、大きく深呼吸をした。隣には福之助がいた。
「ここの風は、饅頭(まんじゅう)を食べた後の寂しさに似てるなあ。」
「はぁ〜あ?」
姉さんは静かにドアを開けた。そして入って行った。福之助も入って行った。
アニーはテーブルの前に座ってテレビを見ていた。天気予報をやっていた。アニーは、すっかり元気になっていた。
姉さんはアニーの前に座った。
「今朝の気分はどうですか?」
アニーは、にこっと笑った。
「とってもいいです。熱もありません。」
「良かったわ〜。」
「ニューフルーじゃなくて良かった。」
「ニューフルー?」
「新型インフルエンザ。」
「アメリカでは、ニューフルーって言うんですか?」
「インフルエンザのことを、略してフルーって言うんですよ。」
「フルーですか、覚えとこう。」
福之助が、姉さんの横に遠慮しながら座った。
「わたしも覚えておきます。」
朝食はテーブルの上に並べられていた。
「これか、サラダってやつは。」
「はい。」
アニーが声をかけた。
「パンが温かいうちに頂きましょうか。」
「そうですね。」
福之助がポットを指差した。
ポットに温かいコーヒーが入っています。
「ああ、そうなの。」
テーブルの上には、牛乳のパックも置いてあった。
「福之助、お祈りして。」
福之助は手を合わせた。
「いただきま〜〜す。」
姉さんとアニーも手を合わせた。
「いただきま〜〜す。」「いただきま〜〜す。」
朝食が始まった。
福之助が、にたっと笑った。
「みなさん、もし、朝食がなかったら何と言うでしょうか?」
姉さんが福之助の顔を見た。
「なんだよ〜、いきなり?」
「問題です。」
「食べてるのに。分からないよ、そんなの。」
アニーも同じように言った。
「分からないわ。」
福之助は得意げに答えた。
「朝食抜きで、超ショック!」
姉さんは感心した。
「お〜〜、いいねえ。おまえ今日は冴(さ)えてるねえ。」
アニーも褒めた。
「素晴らしいわ、それ。」
福之助は得意げな顔をしていた。
「えへん。では、もう一問。」
姉さんが戒(いまし)めた。
「もういいよ。すぐ調子にのるんだから!」
「はい。」
「食べ終わるまで黙ってろ。」
「はい!」
アニーはサラダを食べた後に言った。
「福ちゃん、これとっても美味しいわ。」
福之助は黙っていた。
姉さんが福之助を睨んだ。
「返事くらいしろよ。」
福之助は目を大きく見開いて返事をした。
「はい、ありがとうございます。今、黙ってろって言われたもんですから。」
「融通が利かないやつだなあ。」
テレビでは、おもいやり予算のニュースをやっていた。
アニーが牛乳パックを取りながら言った。
「おもいやり予算を、世界遺産の地域にあげればいいのにね。」
「世界遺産の地域って、高野山とかですか?」
「はい。そしたら、地域が整備されて観光客も増えて、仕事も増えて潤うんじゃないかしら。」
「う〜ん、そうですねえ。」
姉さんはパンをかじりながら、窓の外を見ながらニュースを聞いていた。
「あれ何かしら?」
「どうしたんですか?」
アニーも振り向いて、窓の外を見た。
「肩に担いで歩いてる人ですか?」
「はい。」
「あれは、模型ボブスレーです。」
「模型ボブスレー?」
「天軸山(てんじくさん)に模型ボブスレー場があるんですよ。」
「あれを、上から滑らすんですか?」
「はい。氷の上ではないので車輪もついています。」
「面白そうですね。」
「弘法大師杯という大会もあるんですよ。規定範囲内で自由に作ってもいいんですよ。」
「賞金とかも出るんですか?」
「はい。」
「冬はやってないんですか?」
「冬もやってますよ。と言うより、冬の車輪のない模型ボブスレーが先なんです。」
「あ〜、なるほど。」
「後で、見に行きましょうか?」
「いいんですか?」
「今日の仕事は、高野山内の探索ですから。」
福之助が、黙って頷(うなず)いていた。


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