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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第149回   父のトマトハウス
兄と妹は、鉄筋のアクリルハウスの中にいた。
「お兄ちゃん、いい天気になったわねえ。」
「そうだなあ。」
「これ、赤くなってるよ。」
真由美は、目の上のトマトを指差した。
「おお、いいなあ。」
まさとがやってきて、持ってたハサミを軽く入れ、左手で丁寧にもぎ取った。ダンボールの箱に静かに入れた。
「これで、四十六個だな。」
トマトは木のテーブルの上で育っていた。
「お兄ちゃん、どうして高いところで育てるの?」
「どうしてって?」
「土の上で育てればいいじゃない。そしたら、わたしにも取れるわ。」
「土の上は駄目なんだよ。」
「どうして?」
「土だと虫がつくだろう。」
「ふ〜〜ん。」
「それに、雨が降ったら水浸しになるだろう。」
「そうだね。」
「トマトは、雨が嫌いなんだよ。」
「ふ〜〜ん。」
「トマトはね、アンデスいう雨の少ないところで生まれたんだよ。だから雨に弱いんだよ。」
「ふ〜〜ん。」
「雨が多いとね、病気にるんだよ。」
「ふ〜〜ん。」
「病気になって腐ったら、いやだろう。」
「うん。」
真由美は不思議そうな顔で質問した。
「その箱の中には、何が入っているの?」
まさとは指差した。
「この中か?」
「うん。」
「土の代わりに、ヤシ殻というのが入っているんだよ。」
「やしがら?」
「土のにせものだな。」
「ふ〜〜ん、それで大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。これだと虫もつかないし、病気にもならない。」
「ふ〜〜ん。」
まさとは発砲スチロールに繋がってるパイプを指差した。
「ここに流れてるもので、トマトは大きくなるんだよ。」
「ふ〜〜ん、よくできてるねえ。」
「よくできてるだろう。」
「お父さんが、一人で考えて作ったの?」
「そうだよ。」
「お父さんは、えらいなあ〜。」
「頭が良かったんだぞ。」
「そうだね〜。」
まさとはトマトを取るのを止めた。
「よし、これで五十個だ。」
「保土ヶ谷さんのところに持っていくの?」
「ああ。」
「一個七十円?」
「そうだよ。」
「保土ヶ谷さんが、栗ご飯をあげるって言ってたわ。」
「そうだったな。」
「保土ヶ谷さん、もう起きてるよね。」
「もう起きてるよ。リアカー持って来るから、ここで待ってろ。」
「うん。」
ハウスの隅っこに給水タンクと肥料タンクがあり、その上に父の写真が掛けてあった。真由美が、その写真を見ていると、まさとが戻ってきた。
「真由美、行くぞ。」
「うん。」
「おまえも乗れ。」
「うん。」
まさとは、トマトの入ったダンボール箱をリアカーに載せた。真由美は、父の写真に手を振った。
「お父さん、行ってきま〜す!」




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